「空蝉の恋」 第十三話
「へえ~すごいですね。和仁さんならどんな女性でも落とせるって思いますわ~」
「そうですか?内田さんは手ごわいですけど・・・ハハハ~」
「何を言ってるの、もう。結婚しているんですよ。それに歳上だし」
「またそれですか・・・ご主人ってどんな感じの人ですか?」
「どんなって・・・普通ですよ。真面目でちょっと頑固」
「う~ん、世間でいう昭和の人なんですよね。仕事は出来るけど、家庭はほったらかし」
「そうね、その通りかも」
「ボクの元妻は見た目以上に派手好きで、よく洋服を買っていました。まあ、子供が出来なかったから、お金が結構使えたのもその理由でしょう。転勤や出張が多かったから、寂しさを浪費で紛らわすようになっていました。そのうち、足りなくなって、彼が出来たっていうわけ。女は抱かれていないとダメなんですかね・・・」
「私は子供がいましたので寂しさはそれほど感じませんでした。奥様はあなたが家にいなくて一人で居ると、何のために結婚したのだろうって思われるようになったのでしょうね。抱かれたいと思われたのはその寂しさからだったと思いますよ」
「内田さんは、ずっとご主人とないのですよね?寂しいとは感じられませんか?」
「恵美子さんにも聞かれましたけど、子供と居るとそういう気持ちは起きませんの」
「でも、恵美子は彼を作りましたよ、子供がいても」
「それは、きっと男の子だったからかもしれないです」
「娘か息子かで違うとは思いませんけどね」
「何でも話せるのは娘ですよ、きっと。女の部分でもね。息子が居ないので解らないですが、そう思います」
「確かにどこへ出掛けるにも、娘の方が都合はいいですね。息子は彼女が出来るとそっちの方ばかりに気が向かいますからね」
「そうね、娘は彼が出来ても家のことは考えますから、無茶はしないと信じています」
「お嬢さん、まだ彼がいないんですか?」
「たぶん。聞いていませんから」
「二十歳でしたよね?きっとあなたに似て美人だと思いますが、誘われたりしないのかなあ~」
「夫を見ているから、慎重になっているのかも知れないですよ」
「結婚を考えるとそうなのかも知れないと思いますが、まだ学生でしょう?」
「ええ、でも幾つになっても同じだと思います。そんなに気持ちが変わるということは歳とは関係無いでしょう?」
「確かに。内田さんが恋愛に慎重なのは結婚しているからではなく、そういう性格だからということなんですね。よく解りました」
和仁のその言葉は、まさにその通りだと思えた。
作品名:「空蝉の恋」 第十三話 作家名:てっしゅう