「空蝉の恋」 第十三話
家族旅行から一月ほど経った頃、夫から電話があって、取引先のパーティーに夫婦で出席しないといけなくなったから、来いと言われた。
仕事上ならば断われない。
夫は新しく手掛けた仕事の責任者だったから、完成祝賀パーティーに招かれたのだ。
私は恥ずかしくないように美容院へ行き、エステに行き、黒のドレスを持って一人で新幹線の駅に向かった。
東京行きのぞみ号が入って来て、指定席に座ろうとすると、反対側の席から声を掛けられた。
「内田さんじゃないですか!」
それは和仁だった。
「和仁さん!どうしてここに?」
「仕事で京都に行っていて、これから東京で会議があるんです。すごい偶然ですね~ご主人のところに行かれるのですか?」
「そうでしたの。本当に偶然ですね。夫の仕事先のパーティーに招かれまして出席のために行くんですの」
「へえ~ご主人エリートなんですね」
「そんなことは無いと思いますが、和仁さんのほうこそ有名な商社マンだとお聞きしましたわよ」
「アハハ~恵美子が言ったのですね。それは元そうだったということです。今は退職して、取引先だった企業へ役員で入社しています。小さなところですが、やりがいはありますよ」
「まあ、主人と同じですわ・・・請われるということは能力がおありということだと思います」
「それは、ご主人も同じですよ。羨ましいなあ~あなたのような美人が奥様だなんて」
「またそのようなことを、いけませんわよ人をおだてては」
和仁は隣の席の人に頭を下げて私と替わってもらうように頼んだ。
隣りに座った私に持っていた缶ビールを手渡した。
「飲みましょう、大丈夫ですよね?」
「ええ?今飲むんですか?」
「みんな飲んでますよ。新幹線は退屈だし、飲むことが楽しみなんですよ」
「そうなの・・・じゃあ遠慮なく頂きます」
お酒は強い方ではないけどビールならニ、三缶ぐらいは飲める。
酔った訳ではないだろうが和仁は恥ずかしいことを聞いてくるようになった。
「ボクはね、元妻と結婚した理由はいい女だったからなんです。商社に勤務しているとだんだん派手になってゆき、付き合う彼女なんかも周りは美人だったり、家柄が良かったりとそう言うことを男として誇るようになるんです。たまたま訪問した得意先の受付に座っていた人を誘って仲良くなり結婚したんです。超一流企業の受付ですから、美女ぞろいでした。その中でも元妻はモデル並みでしたね」
仕事上ならば断われない。
夫は新しく手掛けた仕事の責任者だったから、完成祝賀パーティーに招かれたのだ。
私は恥ずかしくないように美容院へ行き、エステに行き、黒のドレスを持って一人で新幹線の駅に向かった。
東京行きのぞみ号が入って来て、指定席に座ろうとすると、反対側の席から声を掛けられた。
「内田さんじゃないですか!」
それは和仁だった。
「和仁さん!どうしてここに?」
「仕事で京都に行っていて、これから東京で会議があるんです。すごい偶然ですね~ご主人のところに行かれるのですか?」
「そうでしたの。本当に偶然ですね。夫の仕事先のパーティーに招かれまして出席のために行くんですの」
「へえ~ご主人エリートなんですね」
「そんなことは無いと思いますが、和仁さんのほうこそ有名な商社マンだとお聞きしましたわよ」
「アハハ~恵美子が言ったのですね。それは元そうだったということです。今は退職して、取引先だった企業へ役員で入社しています。小さなところですが、やりがいはありますよ」
「まあ、主人と同じですわ・・・請われるということは能力がおありということだと思います」
「それは、ご主人も同じですよ。羨ましいなあ~あなたのような美人が奥様だなんて」
「またそのようなことを、いけませんわよ人をおだてては」
和仁は隣の席の人に頭を下げて私と替わってもらうように頼んだ。
隣りに座った私に持っていた缶ビールを手渡した。
「飲みましょう、大丈夫ですよね?」
「ええ?今飲むんですか?」
「みんな飲んでますよ。新幹線は退屈だし、飲むことが楽しみなんですよ」
「そうなの・・・じゃあ遠慮なく頂きます」
お酒は強い方ではないけどビールならニ、三缶ぐらいは飲める。
酔った訳ではないだろうが和仁は恥ずかしいことを聞いてくるようになった。
「ボクはね、元妻と結婚した理由はいい女だったからなんです。商社に勤務しているとだんだん派手になってゆき、付き合う彼女なんかも周りは美人だったり、家柄が良かったりとそう言うことを男として誇るようになるんです。たまたま訪問した得意先の受付に座っていた人を誘って仲良くなり結婚したんです。超一流企業の受付ですから、美女ぞろいでした。その中でも元妻はモデル並みでしたね」
作品名:「空蝉の恋」 第十三話 作家名:てっしゅう