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遅くない、スタートライン 第2部 第2話

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(6)

俺はホテルの調理室に行って、2人に頭を下げて礼を言った。2人も俺の仕事の話を聞いて喜んでくれた。また、テレビ局のディレクターとスタッフが出した条件も話してみた。

「えぇ…加奈ちゃんどう思う?」美裕は横の加奈ちゃんに聞いた。
「いいと思う。あ、私に話すと言うことは話が通ってるってことですか?MASATO先生」
「うん。すぐに会長に連絡入れて、ホテルの宣伝になるからぜひにって言ってました。また総支配人からお話があると思いますが」
「それならいいです。美裕ぉ…一緒にしよう!美裕のカフェのオープンも私ヘルプに行くよ!」
「ホント?いやぁん…超うれしい」美裕は加奈ちゃんに抱きついた。それぐらい嬉しかったってことだな。

美裕と加奈ちゃんに依頼が来た仕事は、俺の仕事だが「頑張る女性職人」という番組があって、美裕と加奈ちゃんに出演してほしいとのこと。また美裕がオープンするカフェも宣伝してくれると、テレビ局のディレクターは言った。いい機会だ…全国ネットで宣伝してもらったら、美裕のカフェにもいい効果をもたらすと俺とは思っている。

俺は部屋に戻ってから、嬉しくて美裕をまたお姫様抱っこしてしまった。美裕も喜んでくれて、俺の首に抱きついてくれた。
「すっごいね!強気のMASATO先生で押したんだね」
「うん。もぉ…普段の俺からは想像できない押しの強さでしたよ。学校長と副校長が驚いてた。倉田さんも驚いてた!そんな強気にさせたのは美裕だよ。あ、俺了解取るつもりで、伸ばし伸ばしになっててごめん。今回はさフィクションなんだけど、モデルは美裕なんだ。美裕の人生をそのまま書くんじゃない。俺なりにアレンジして、同じ女性で頑張る職人さんにエールを送りたいんだ。これだけ書きたいと思った作品は今までないよ」

マサ君こと…MASATO先生の意気込みが感じられた。私がモデルって言ってたけど、きっと私以上の人物が登場するんだ。また作品も書き始めてるそうだ。私と遊ぶ時間も作って、仕事もして作家以外の仕事もして、ホントすごいはこの人!私は改めてこの人の才能を感じた。


マサ君の意気込みに負けた、テレビ局のディレクターは講演会が終わったら緊急に会議を開き、年内にドラマ製作準備に入ると約束してくれたそうだ。年明けたら、忙しくなるよ!MASATO先生!それに私の作品の指導もあるし、大丈夫かな?

また、美裕の目が1点になってるわ。美裕の頭の中で今計算中か?俺の仕事と自分の指導にって。俺は美裕の頭を軽く指で突っついた。
「今から計算してもダメやで。もぉ俺が計算してるから!美裕は自分の事考えたらええ。でも俺…仕事ばっかりはイヤや!美裕との時間も大事にしたいし、楽しみたい。今後の生活の事もあるしな、それも年内に考えるさ。でも、明日の講演会が終わったら俺は一旦頭をオフにする。で、このリゾートホテルで美裕と思う存分遊ぶぜ。ここで仕事もするけど、それは明日までやからな。わかったぁ?美裕」
「うん。そーだね…やることは一杯だけど、メリハリつけてすればいいんだね」
「そーいうことさ」俺は美裕の唇に軽くキスをした。

MASATO先生の講演会は大成功だった。ホテルのブランケットホールで行われた。講演チケットもネット販売して数時間でソールドアウト!また当日立見席も販売し、整理券を獲得するためにホテル前で開演時間の5時間前から並んだ人もいたそうだ。出勤前の加奈ちゃんがホテルの入り口で長蛇の列を見て驚いたそうだ。立見席は100人だったが、その100枚のチケットに400人以上も並んだそうだ。ホテル側でカウントし、後で報告を受けたMASATO先生だ。講演会が始まる前まで、私の胸の中に顔つけて緊張してたけど、そこはプロだね!ステージの裾から歩き出したMASATO先生の顔つきが一気に変わった。緊張して目が吊り上がってたのに、あの人懐っこい瞳で颯爽と歩き、第一声の「こんにちわぁ!」でスマイルした途端、客席から女性客の喜ぶ声に拍手に、男性客からどよめきの声が上がったもの。私もステージ裾で見てたけど、顔も赤くなり口で手を押えました。横の副校長が口に手を当てて笑ってましたわ。私の事…

「すっげぇだろ!あいつ…ステージ度胸はすんごいの。知ってるよね?バンド組んでたの」副校長が私に言った。
「はい、公式サイトで知りました。22歳でシングルデビューして25歳まで歌ってましたもんね」
「うん。デビューして2年で全国ツアーまでしたんだ。そんな中でアイツ…作品書いて新人賞もらって、人気も絶好調なのにさ芸能界引退したんだ。その当時もう大変だったよぉ!俺ん家まで所属事務所の社長はくるわ、テレビ局のディレクターはくるわ。MASATOどこにいるんだって!」
「どこにいたんですか?隠れてたんですか?」
「うん。引退表明してからすぐ海外に高飛びしやがった。その当時さ、学校長の娘の愛ちゃんがフランスにいたんだ。フランスの愛ちゃん頼って半年ほど帰ってこんかった。帰ってきた時には、俺に書いた作品の束を出しやがった」
「すっごぉい…その半年で作品書きまくってたんですか?で、その作品たちどーしたんですか?」
「俺と学校長が読んで、選りすぐって出版社に売り込んだ。その中の1冊がまた賞をもらったんだ。あいつ…それから現代小説は書かなくなって、エッセイや旅行記や紀行文に走ったんだ。それがさ、美裕ちゃんと出逢ってから頭がまた、現代小説に向いたみたいだぜ。」
「そうなんですか…そうだったんだ。MASATO先生」私はマサ君の過去を、副校長からこの時に聞いた。ま、聞いたことは黙っておこう。そのうち話してくれると思ったから。

茶話会はオープンテラスで行われた。お天気も良く暖かい日だったので、茶話会の招待客も喜んだ。また、MASATO先生後ろに私と加奈ちゃんが従え、招待客にご挨拶と私達が焼いたお土産のマドレーヌとマカロンの入った紙袋を1人1人手渡し、笑顔で「よろしくお願いします」と頭を下げていた。また招待客もMASATO先生自らのお土産手渡しに、スマホやデジカメで写真撮影もした。普段…写真撮影はキライなMASATO先生らしい。(ホンマ?私といるときは、始終スマホでカメラ撮影し、自撮りに私とツーショット撮ってるけど?)そのキライな写真撮影も笑顔で応じていた。

「明日…大雨かな?それとも吹雪かな?美裕ちゃん…茶話会終わったらよろしく。思いっきり仏頂面するから!」
講演会に来ていた愛先生が言った。えぇ…そーなの?私も逃げたい気持ちになった。愛先生と帰ろうかな?(笑)


MASATO先生は、テラス席の出口で招待客を笑顔で送り出し、最後の1人が帰りドアが閉められた途端…床に倒れた(笑)ご本人いわく…力尽きたと!もぉ、私と副校長と愛先生3人がかりで、MASATO先生を正気に戻したわ。そのまま部屋に運び込んだりしたら。今後の仕事に支障がでるじゃない!フロントマネージャーが冷えピタと氷枕にドリンクを持ってきてくれて、ソファーくっつけてMASATO先生をボーイさん3人でがかりで運んだのよ。