ある音楽雑誌の撮影
ベースのジミーは、自身の本名「ジェームズ」がヘブライ語で「かかとをつかむ者」を意味する言葉に由来するということで、それをテーマに撮影をした。また、偶然かあえてそうしたのか、撮影はヒューゴが使っているのと同じスタジオの別室で行われた。
そこでは、ちょっと面白いショットが撮られた。それは、日本一有名な「悪の組織」の戦闘員の真っ黒全身タイツをまとったエキストラが、非常口のピクトグラムのようなポーズをして、その片足のかかとをジミーがつかむというものだった。このちょっとコミカルなフォトを撮るとき、カメラさんは
「おおっ、勇敢だね、ジミーく〜ん」
と笑って言いながらシャッターを切った。
そのあとに、戦闘員風のエキストラがうつ伏せに転んだポーズを取り、彼の片脚をジミーが片手で押さえ、もう片方の手でそいつのかかとをつかむという、随分とワイルドなショットが撮られた。また、「悪の組織」の戦闘員のぬいぐるみ人形のかかとをつかんで逆さに持って「どや顔」で直立するといったショットも撮った。
余談だが、そのときのジミーの衣装はヒーローっぽいものではなく、黒ジャケットに青グラデーションの太いラインの入った白Ｔシャツ、ボトムはデニムといったごくカジュアルな服装であった。
そしてギターのスティーブンは、自身の名前がギリシャ語で「冠」という意味の言葉に由来するということで、トロント市内の別のスタジオで「冠」を使った撮影を行った。そこにはアンティーク調の家具が並べられ、さらに西洋の鎧が立てられている。このセットのすごさに、スティーブンも
「すごっ、豪華！」
と叫んだほどである。
最初に、セットの中央でスティーブンがひざまずいて頭を下げ、その頭に赤と青の宝石で飾られた金色の冠を載せられるという、戴冠式チックな演出の横顔ショットが撮られた。なお、スティーブンを撮影したのは、「ＬＯＶＥ ＢＲＡＶＥ」の（ほぼ）専属カメラマンのホシノさんである。
次に、頭の冠に手を当てて満面の笑みを見せるスティーブンのショットを撮った。全身黒いレザー調の衣装でいかにもロックっぽく決め、胸には３連のリングネックレスが輝く凛々しい姿を撮るとき、ホシノさんは、
「スティーブン、君は王子様か、うら若き王様みたいだねぇ〜」
とべた褒めした。これには、被写体を務めるスティーブンも照れ笑いした。
今度は、革張りのソファーの真ん中に座って軽く開脚し、両膝の間で指を組むというポーズのショットを撮った。スティーブンは、ちょっとだけ生意気な顔をしてみせた。
「おっ、ロックプリンス君臨だね？」
ホシノさんも楽しそうだった。ほかにも、王笏の代わりに本人愛用のエレキギターを構えて立つ姿や、テーブルの上に両肘を乗せて指を組んで真顔で正面を向くといったショットなどが撮られた。
撮影終了後、スティーブンが頭を横に振って笑いながら
「いやぁ、やっぱり恥ずかしいです、冠かぶったフォトは」
と言うと、ホシノさんは
「そうかな？まんざらでもない顔してたけどね、君」
「いやいや…」
メンバー全員が撮影を終えると、トロント市内にあるレストランでスタッフ共々合流し、「集結」を互いに喜び合って、それは楽しい夕食の時間を過ごしたそうな。また、閉店間際の時間になっても店内に残ったのは、「ＬＯＶＥ ＢＲＡＶＥ」の４人だけだったとか。