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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「空蝉の恋」 第十一話

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「そう、話してくれていたのかと思っていた。実はね、あなたにはいつか言おうと思っていたんだけど、付き合っている彼がいるのよ。もう二年ぐらいになる。偶然だけどその彼のお友達が和仁だったの。そんなわけで誰かいい女性を紹介したいって考えて、あなたのことを思いついたっていうわけ」

「恵美子さん、何言っているの。私には夫が居るし、たとえ不仲でもほかの男性とお付き合いしたいだなんて考えないわよ。あなたのしていることに反対はしないけど、今の私には考えられないことよ」

「まあ、かわいそうな返事ね~。和仁はカッコいいし、お金もあるし、性格も優しい人よ。不満はないと思うけど、それに若いから元気だしね」

「できないものは出来ないし、したくないことはやらない。こうして三人でお会いして、温泉やドライブやお食事ならお断りはしないけど」

「佳恵さんの言うことは当たり前の女性の意見だよ。おれは恵美子に紹介して欲しいと頼んだわけではない。可愛い人がいるから会ってみて、とは聞かされたけどね。人の奥さんを奪おうなんて算段はしてないよ。でも、初めて会ってからボクのなかでは付き合いたいという気持ちが大きくなってきた。三人で会うことが前提でも構わない」

コーチから告白されたばかりだというのに、また若い男性から告白された。こんなことが続くだなんて驚くばかりだ。
今までの人生で男性から付き合いを申し込まれたことは夫以外にはなかった。
免疫が無かったというのだろうか、自分のことを可愛いと言ってもらえることは、その事だけを言えば天にも昇るぐらい嬉しい気分だった。

お風呂場で見る和仁の身体は、夫とは違い筋肉質で贅肉もなく、同じ男性なのかというぐらいに別に感じられる。それはコーチにも感じられた。
女として抱かれるなら・・・理想だろう。
チラッとそんなことを思う自分は、やはり夫に言われたように淫乱なのかも知れない。

恥ずかしさは、男の人から見られる自分に対してではなく、自分が男の人に感じる別の世界の想像から来ていると知った。以前よりももっと強い羞恥心に顔が紅潮する。
知られないように、うつむき加減で顔を合わせないように外の景色を眺めていた。

ふと後ろに気配を感じて振り返ると、別の男性が歩いていた。混浴なので仕方のないことだ。私に見せたいと言わんばかりにタオルで隠さずに近づいてきた。
とっさにすれ違うように腰をかがめて歩き、恵美子の傍に行った。

私たちはもう少し居たかったけど、貸し切り状態ではなくなったので温泉を後にした。
食事を済ませての帰り道、話す言葉も少なくなっていた。