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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第十一話

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恵美子から電話があって、インフルエンザは息子から移されなかったと聞かされた。良かったね、と返事してちょっと自分の後ろめたさを感じていた。
和仁と再び待ち合わせして温泉へ行く日がやって来た。
今回は待ち合わせ場所に先に恵美子は来ていた。

「今日はいいお天気ね~風もないし、暖かいって感じられる。絶好の温泉日和ね~露天風呂が楽しみだわ。そうだ!和仁も一緒に入れるように混浴がいいわね」

「ええ~混浴・・・そんなあ~恥ずかしいじゃないの。無理だわ」

「まあ、かまととぶって・・・ハハハ~今時は浴衣を着るのよ」

「水着着て入るということなの?」

「ううん、バスタオルを巻いたような感じの浴衣よ」

「そう・・・でもやっぱり恥ずかしい」

「大丈夫よ。佳恵さんは誰にも恥ずかしいと思わせないスタイルだし、お肌だから」

私は恵美子が何故混浴にこだわるのか解らなかった。
普通はそんなふうには考えないものだ。和仁さんとなんとか仲良くさせようとでも考えているのだろうかとさえ疑った。

和仁がやってきて私たち三人は二時間ほどのドライブをして南信州にある混浴の温泉に着いた。
茶褐色のお湯はぬるめで、眼下に川が流れていて、少し離れたところに掛かっている橋の上からは、目が良ければ私たちの入浴姿がきっと見えると感じた。

「佳恵さんは、本当に綺麗だ・・・ちょっとドキドキしてきたよ」

笑いながら和仁はそう言った。

「まあ、和仁って、そんなこと言ったら佳恵さんが困るわよ、ねえ?」

恵美子も怪しい含み笑いでそう言った。

「こうして入っているだけでも恥ずかしいのに、本当に困りますわ」

「そういうところが恵美子にはない可愛らしさなんだよ。佳恵さんは誰からも愛される存在だと思う。旦那さんがいなければ、即結婚を申し込んだよ、ハハハ~」

「まあ、私だって好きな人の前では佳恵さんと同じように恥じらうわよ」

「それではダメだよ。すべての人の前で自然と恥じらう仕草を見せるのが、本当に可愛い女性って思えるんだよ、顔形はその次なんだよ、男には」

「ふ~ん、なんか差別的に聞こえるわ、ねえ?佳恵さん」

「私は恥ずかしいと思うからそう言ったまでです。可愛くなんかありませんので誤解されないようにしてください」

「それよりね、佳恵さん私のことで何かこの人から聞いていることない?」

「聞いていること?」

知っていたがそう聞き直した。