ねとげ~たいむ・エキスパート!!
クエスト3,新たな力
「ストライク・ブレードっ!」
私のファイア・ソードが唸りを上げた。
炎の斬撃がモンスターの胸を切り裂くと傷口から炎が噴きでた。
『ギャアアッ!』
私が今戦ってるのはざっとみて3メートルはあるだろう、鋭い目に大きく裂けた口から覗く鋸の様な牙、巨大な体と一体化した顔に全身から白い体毛が生えた大猿のモンスター、シルバー・イエティだった。
現在受けているクエストはシルバー・イエティが雪山の山道に現れて冬籠りに必要な物資を運んで来る行商人を襲っているので退治すると言う『雪原の暴れん坊』だった。
吹雪の吹き荒れる雪原の中、私達は炎属性の武器を装備してシルバー・イエティと交戦していた。
こいつは氷属性なので炎属性は有効…… のはずだった。
『ガアアッ!』
シルバー・イエティは大きく吠えながら胸を張ると炎が消えてしまった。
「くっ!」
私は顔を顰める。
すると背後から跳んだエミルが技コマンドを選択して拳を突き出した。
「エミル・パーンチっ!」
エミルの炎のストレート・パンチが後頭部に炸裂する。
私同様に攻撃した箇所から炎が噴き出た。
エミルは後ろに跳んで間合いを開ける、でもシルバー・イエティは激しく上半身を振るうとエミルの炎も消えてしまった。
「何で効かないのよ〜っ!」
エミルは地団太を踏んで悔しがった。
ただ全く効いて無い訳じゃない、単に私達の武器の力が通じなくなって来たんだ。
確かに炎は氷に強い、でもここはエキスパート・ランクで、モンスターも強力になってる、そうなれば弱点属性だって役に立たない。
だけどこっちも考えて無い訳じゃない、何しろ私達は時間稼ぎだったからだ。
「アンタ達、準備ОKよ!」
少し離れた場所でレミが叫んだ。
その近くではセンリが準備していた。
足元の魔法陣がダブル・スキルによって2倍に膨れ上がるとレミのライジングの魔法で強化された巨大な火球が頭上高く掲げられた雷鳥の杖の上に浮かんでいた。
「古人曰く『石の上にも三年』! ギガ・ファイザッ!」
センリの巨大火球が放たれた。
私達が左右に避けると巨大火球がシルバー・イエティに炸裂し、火柱に包まれた。
『ギャァアア――ッ!!』
シルバー・イエティの断末魔が聞こえる。
いくら武器が弱くとも魔術師や神官はレベルが上がれば魔法の攻撃や回復量も大幅に上がる。
しかもダブル・スキル+レミの魔法攻撃力増加魔法でパワーアップした火炎魔法は『強力』なんて言葉を簡単に通り越した。
これでクエスト終了…… そう思われた瞬間!
『ガァアア―――ッ!』
黒焦げになったシルバー・イエティが火柱の中から飛びだして私に向かって来た。
「コロナっ!」
レミが叫んだ。
皆自分のターンを使っている、しかも想定外の事に思考が停止ししていた。
だけど私はとっさにスキルを発動させた。
「ス、スキル発動っ!」
私はブロック・スキルで強制防御する。
シルバー・イエティと言うより最早ブラック・イエティと言えなくもないそのモンスターは焼け爛れた巨大な右拳で私を殴り飛ばした。
「きゃああっ!」
私は数メートル吹き飛ばされて雪原に転がった。
「このぉ!」
エミルはプラスアタック・スキルを発動させた。
「うりゃああ―――っ!」
エミルは雪の大地を走り出してシルバー・イエティに向かって言った。
一方シルバー・イエティはエミルに気付いて振り返った。
その刹那、エミルの正拳突きが腹部に炸裂した。
『ガッ、アアァァ……』
シルバー・イエティの水月に強力な一撃が炸裂し、白目になると口から泡を吹いて横転した。
これで本当のクエスト終了だった。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki