ねとげ~たいむ・エキスパート!!
私は街に戻って来た。
「いや〜、満足満足〜」
「はぁ、今日はもう上がるわよ、私達朝早いんだから」
「ええっ、もう1回くらい良くない〜」
「アンタね、我がままもいい加減にしなさいよ」
「何よ、良いじゃん良いじゃん!」
「エミル、約束は今回だけ…… 約束を破る事や我がままを言い過ぎると信頼を失う、古人曰く『覆水盆に返らず』になりたい?」
センリが言った。
この言葉の意味は一度零してしまった水は二度と戻る事は無いと言う意味で、一度失った信頼や失敗は取り返しがつかないと言う意味だ。
エミルは我がままなのは認める、でもちょっと言い過ぎかもしれなかった。
以前エミルがレミとケンカしてパーティ止めようとした事があったけど、その時は運良く和解できた。
でも前回が上手く行ったからって今回も上手く行くとは限らない……
無理な願いだってのは分かってる、でも私としてはエミルや皆と最上級のマスター・ランク…… いや、できればずっとゲームをやりたいと思ってる。
私もエミルに言った。
「エミル、気持ちは分かるけどさ、今日の所は引き上げよう…… 楽しみは残して置いた方が良いよ?」
「う〜〜ん」
エミルは口をへの字に曲げて腕を組んで考えた。
「……分かった。残念だけど仕方ないよね」
エミルは分かってくれた。
まだパーティ組んで半年しか経って無いけど、エミルは色々な人と知り合って成長していた。
それはレミやセンリにも同じだ。
怒りやすいのは前からだし、第一印象は『恐怖』の二文字しかなかったし、さらに『家庭の事情』から人を遠ざける所があったけど、今じゃその境界線は消えていた。
センリもどこか冷たいと言うか、機械みたいなイメージだった。それに表情も読めないから何考えてるのか分からなかったけど、上京して初めての友達が私達(パソコン内)と言う事を知ってから心から通じ合えるようになった。
私も少しは変わったかな?
そんな事を考えているとお別れの時間になった。
「それじゃ、私はもう上がるわね」
「……私も」
「じゃ〜ね〜」
3人とも画面から消えた。
私もログアウトのコマンドを選択した。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki