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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第八話

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「ゴメンなさい。もっと早くに電話かけようと思っていたんだけど、今病院にいるの。息子がね、体調が悪くて乗せてきたの。どうやらインフルエンザみたい」

「ええ~それは大変ね。じゃあ今日は中止よね?」

「ねえ、和仁さんは楽しみにしているから、あなたと二人になるけど付き合ってくれないかしら?」

「そんなあ~それは出来ないよ」

「どうして?」

「だって、和仁さんとあなたは、そのう、仲が良いんじゃないの?」

「同級生というだけよ。そんな心配はいらない。佳恵さんもこんな機会なんて無いから、楽しんできてよ、ね?お願いだから」

何と言うことだ。和仁と二人でたとえ日帰りの温泉とはいえ、私は出来ないことだと思った。
恵美子にはハイと返事して当人には断るつもりで電話を切った。

待ち合わせ場所にやがて和仁はやって来た。

「お待たせしました。あれ、恵美子は?」

「恵美子さん、息子さんがインフルエンザだとかで一緒に病院にいるみたい。なので、行けないと今電話がありました」

「そうなんだ。インフルエンザか、この時期は気をつけないといけないね。じゃあ、二人で行きましょうか?」

「その事なんですけど、私は夫がある身ですから、和仁さんと二人だけでは無理です。ゴメンなさい」

「そうですよね~だったらお茶でもして帰りましょうか?」

「それでしたら構いません。モール内のカフェでいいですか?」

「いいですよ。行きましょう」

良かった。機嫌を悪くしていないようでホッとした。こんなことになるだなんて考えもしなかったから、気持ちが落ち着くと目の前にいる和仁に目を合わせることが恥ずかしくなっていた。

「内田さんは家族で旅行に行かれたのですよね?楽しかったですか?」

「はい、初めてあんな良いホテルに泊まれて楽しかったです」

「それは良かったですね。ご主人も家族両行をプレゼントするだなんて素敵ですよ」

「ええ、そうなんですが、実は聞いていなかったんです。娘から聞かされて確認した次第というわけで、主人曰く、驚かせたかったと」

「へえ~そんな計らいだったんですか。やるじゃないですか」

「そうだと嬉しいのですけど」

「なにか腑に落ちないことでもあるのですか?」

「そうではないのですが、これまで私を驚かすようなプレゼントとかはしなかった人ですから、何となく驚くだけで」

「一人住まいになって、妻の有難みが解られたのだと思いますよ」

「そうかしら・・・それは無いと思います」

「言い切りましたね。男は妻の有難みなんて失くしてみないと気付けないものなんです。離婚して後悔するのはたいてい男性側ですからね」

和仁は意味ありげに私をじっと見つめてそう言った。