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ワタシタチ。2

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秋のはじまり






改札でバイバイをした後

家に戻りながら短くなった髪の毛を触ってみた




君の嫌いなショートヘア




付き合う前から人伝で聴いていた

髪の長い女の子が好きらしい







聴いた瞬間「ラッキー」とにやけた

私はずっとロングヘアーだったからだ







二月の終わり

誰かと桜を見に行きたいなあ、とふと思い

真っ先に思い浮かんだ彼に告白した結果

見事付き合えて今に至る










だけど切った







秋のはじまり
















...........






















「で、どうしたの。」







短くなった私の髪を時々見つめて

彼は戸惑いを隠せないのか頼んだ烏龍茶の氷を

ずっとストローで突いていた







「別に。」







私はなかなか飲み干せないオレンジジュースに

少し苛立ちを覚えた







だから







窓の外を見つめ

「あ、落ち葉。」なんて呟きながら流れで言った










「昨日、ゆきちゃんと居たでしょう。」







沈黙が流れ

彼が笑う







「なんで?」










「全部知ってるから。」








漫画みたいなドラマみたいな

こんな台詞を近所のファミレスで言うことになるだなんて誰が想像しただろう







少なくとも二月の私はこんなことになると

思ってはいなかった













「浮気してるでしょ。」










問い詰めなきゃ前に進めないのが切ない













彼の沈黙は続く










「何か言ってよ。」










うわー嫌な言い方

超ウザイ女じゃん

でも仕方ない

言わせる状況を作ったのは誰

だから今は関係ない













「気付いてたの?」










「なんとなく。」













彼はモテるタイプではない

だけど好かれる人には好かれるタイプ




ゆきちゃん(彼と同じ職場の後輩)のことは

彼の話によく出てきていたから知っていたし

でもまさかとは思っていたけどたまたまラインしているのが見えてしまってその内容が







ただの後輩

ただの友人







とは思えない会話だった




何かあるな、とその時思った










そしたら昨日、買い物を終えて駅のスーパーから出たところ

仲睦まじく腕を組んだ二人が高そうなレストランに入って行くのを見かけた







怒りや悲しみよりも先に

情けなくて仕方がなかった







あんな男に時間をかけていた自分が

バカバカしく思えたのだ










その夜、美容師の友人にお願いして

伸ばし続けてきた自慢のロングヘアーを

バッサリ切ってもらうことにした










鏡に映る見たことのない自分の姿に泣けた

私は彼のことが大好きだった










「このお祭り行こうよ。」







守らない約束はしないで欲しい







「初めてきたお店なんだけど。」







彼とゆきちゃんが
二人で行ったことのあるお店だった







「好きだよ。」







もうやめて























































ファミレスを後にし

駅へと向かっている途中

街中の不動産屋で物件を見ているカップルを見かけた









「早く一緒に住みたいね。」









私もあんなこと言ってたな、と少し笑えて

同時に胸が痛んだ



















君の嫌いなショートヘア

ゆきちゃんはとても綺麗なロングヘアーだった




でも今はもう関係ない

















改札でバイバイをした時
後ろ姿を見送ることはもうないのだと実感した











それでいい

そうして人はまた新しい恋に出逢う











短い髪の毛が案外似合ってるかもと
思ってしまったこと







切って良かったなと思ってしまったこと


















この先もずっと
君には秘密にしておくね










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『秋のはじまり』/ meluco.











作品名:ワタシタチ。2 作家名:melco.