ワタシタチ。2
ブルーベリー
何も知らないくせに、と12月の寒空の下
貴方がくれたブルーベリーの味のするガムを噛みながら思った。
何も話していないから当たり前なんだけれど。
それでも知って欲しいんだよ
言葉なんてもう必要ない、目だけで、空気だけで、温度だけで伝わるくらいのところまで愛して欲しいんだよ、愛したいんだよ
私が欲しいのは上辺のものなんかじゃない
貴方は分かっていない
何にも、何にも、始めから今まで何にも私のことなんて1ミリも分かっていない、分かろうとしていない、その態度に腹が立って私は、1人分の、とびっきりの肉じゃがを作った
一口、紛れもなくこれは自分が作ったものだ、と
それがたまらなくて、キッチンに立ったまま全て食べ終えた
憎くて、愛しくて、私は貴方で、だけれど、貴方は私に入ってくることは出来なくて、危うくて、脆くて、冷たいのにじんわりとあたたかい何かが、私を満たして、それでもかなしくて、目を瞑っても、目が覚めても、朝陽が私を包み込んでも、貴方の、指先の形や髪の毛の痛み具合、肌荒れ、思考、全て覚えたくて、
それが変だというのならば
これが愛と呼べないというのならば
私はまだ愛を知らない
愛というのは、身勝手で、変幻自在で、味や匂いはせず、色や形もなく、どこへでも行けて、此処に在る。
だから私は愛を綴る音楽が好きなのかもしれない
それぞれが定義する愛を知ることが出来る
乾燥で血が出た貴方の唇を
リップクリームを塗ったばかりの私の唇で塞いだ
ブルーベリーの香りがふたりの口に広がる
愛、と名付ける
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