「空蝉の恋」 第七話
さすがに年末年始は混雑していた。それでも泊まったホテルが一流だったので、料理も素晴らしく、部屋からのオーシャンビューも絶景だった。
特に夕日が沈む時間帯はロマンチックに感じられる。
娘と三人になることを旅行代理店に伝えて、ホテルの予約をトリプルに変更希望を出したが、時期が時期で空室が無く、シングル部屋を追加することで決まっていた。旅行に出掛ける前にシングルは娘が利用して、ツインは夫婦で使うことと決めていたが、チェックインの際に渡されたシングルルームのキーを夫が持って、ツインの部屋のキーを私に渡した。
「ねえ、洋子が一人部屋を使うと言っているけどそうしないの?」
「いや、親子で使えよ。そう滅多に来れるって訳じゃないから」
「パパ、どうしてママと一緒が嫌なのよ」
「一緒が嫌なんじゃなく、洋子と佳恵が一緒の方が良いと思っただけだ。じゃあ夕食の時に電話してくれ」
「パパ!待って・・・」
夫の春樹は自分の荷物を持ってエレベーターに向かって歩き出した。
私と娘は顔を見合わせて笑うしかなかった。
「ママ、パパってどこまでも自分本位なのね。せっかく旅行まで考えたというのに、こんなの変よ」
「洋子、もういいのよ。旅行に連れて来てもらえただけでいいじゃないの。それにとってもいいところじゃない」
「そうだけど、なんか不満が残る」
娘は父親のことを自分勝手だと言った。幼いときはパパが大好きと言っていたことを思い出していた。
息子が居ないので解らないけど、娘はよく父親のことを見ているものだと感じさせられる。
部屋に入って寛いでいると、恵美子から電話が掛かってきた。
「はい、佳恵です」
「ゴメンなさいね。お楽しみのところ・・・ねえ?ご主人と仲良くしている?」
「変こと聞くのね。別々の部屋で泊まっているのよ」
「ええ?それ本当?何故?」
「あの人がそう決めたから、とやかくは言えないの。私は娘と同じ部屋」
「そうだったの・・・寂しいわね、せっかくのお泊りなのに」
「そんなふうには感じないけど、旅行自体は楽しいから別にいいの」
「そんな関係なのね・・・そう、私も同じようなものだから何だか佳恵さんの気持ちが解るわ」
「娘といる方が気も楽だし、たくさん話せるから嬉しいの」
「そんなこと言っていると老けちゃうわよ。女は恋愛を感じてないとダメだと思う」
「大胆な発言ね。恋愛って夫がいるのよ」
特に夕日が沈む時間帯はロマンチックに感じられる。
娘と三人になることを旅行代理店に伝えて、ホテルの予約をトリプルに変更希望を出したが、時期が時期で空室が無く、シングル部屋を追加することで決まっていた。旅行に出掛ける前にシングルは娘が利用して、ツインは夫婦で使うことと決めていたが、チェックインの際に渡されたシングルルームのキーを夫が持って、ツインの部屋のキーを私に渡した。
「ねえ、洋子が一人部屋を使うと言っているけどそうしないの?」
「いや、親子で使えよ。そう滅多に来れるって訳じゃないから」
「パパ、どうしてママと一緒が嫌なのよ」
「一緒が嫌なんじゃなく、洋子と佳恵が一緒の方が良いと思っただけだ。じゃあ夕食の時に電話してくれ」
「パパ!待って・・・」
夫の春樹は自分の荷物を持ってエレベーターに向かって歩き出した。
私と娘は顔を見合わせて笑うしかなかった。
「ママ、パパってどこまでも自分本位なのね。せっかく旅行まで考えたというのに、こんなの変よ」
「洋子、もういいのよ。旅行に連れて来てもらえただけでいいじゃないの。それにとってもいいところじゃない」
「そうだけど、なんか不満が残る」
娘は父親のことを自分勝手だと言った。幼いときはパパが大好きと言っていたことを思い出していた。
息子が居ないので解らないけど、娘はよく父親のことを見ているものだと感じさせられる。
部屋に入って寛いでいると、恵美子から電話が掛かってきた。
「はい、佳恵です」
「ゴメンなさいね。お楽しみのところ・・・ねえ?ご主人と仲良くしている?」
「変こと聞くのね。別々の部屋で泊まっているのよ」
「ええ?それ本当?何故?」
「あの人がそう決めたから、とやかくは言えないの。私は娘と同じ部屋」
「そうだったの・・・寂しいわね、せっかくのお泊りなのに」
「そんなふうには感じないけど、旅行自体は楽しいから別にいいの」
「そんな関係なのね・・・そう、私も同じようなものだから何だか佳恵さんの気持ちが解るわ」
「娘といる方が気も楽だし、たくさん話せるから嬉しいの」
「そんなこと言っていると老けちゃうわよ。女は恋愛を感じてないとダメだと思う」
「大胆な発言ね。恋愛って夫がいるのよ」
作品名:「空蝉の恋」 第七話 作家名:てっしゅう