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ツイスミ不動産 物件 X

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 真夏の昼下がり、サファリキャップを粋に被った紳士と、キャペリン帽子のつばの奥から微笑む貴婦人がツイスミ不動産を訪ねて来た。
 Iと名乗るこのシニアカップル、子供たちはとっくに巣立ち、親の介護も昨年終えたという。きっとこの歳に至るまで色んなことがあったに違いない。だが今は人生終盤の自由を満喫しているようだ。

 応対に出た笠鳥(かさとり)課長とスタッフの紺王子(こんおうじ)を前にして、夫人はおもむろにタブレットを取り出し、ツイスミ不動産のHPを立ち上げた。そして夫が画面のメッセージを朗々と読み上げる。

 長い旅路の果てにきっとある、あなたの居場所。
 これからの残された人生は穏やかに、そして好きなように暮らして行きたい。そんな終の棲家をあなたはお探しではありませんか?
 お任せください、ツイスミ不動産に。
 あなたのご要望に応え、最高にご満足いただける物件をご紹介致します。

 I氏は一呼吸し、「これ、嘘じゃないですよね」と眼光鋭く睨み付けてくる。笠鳥凛子ことカサリンは若干の震えを覚える。