ツイスミ不動産 物件 X
目に青葉 山ほととぎす 初鰹
桜花は散り、はや木々の緑が目を刺す初夏。
そんな折に、くたびれた薄手コートを脇に挟み、初老カップルがツイスミ不動産に入って来た。
営業責任者の笠鳥凛子(かさとりりんこ)課長は一見で、山あり谷ありの人生を共に歩み来て、その終幕にやすらぎの庵を探し求めて訪ねて来たと感じた。なぜなら婦人の手にはツイスミ不動産のチラシが。そしてそこに書かれてある文句が…。
『長い旅路の果てにきっとある、あなたの居場所。
これからの残された人生は穏やかに、そして好きなように暮らして行きたい。
そんな終の棲家をあなたはお探しではありませんか?
お任せください、ツイスミ不動産に。
あなたのご要望に応え、最高にご満足いただける物件をご紹介致します。』
きっとこの誘いに心が動かされたのだろう。
作品名:ツイスミ不動産 物件 X 作家名:鮎風 遊