ツイスミ不動産 物件 X
松が明け、冬の晴天の昼下がり、絶対安心/安全の終の棲家が見付かったとの連絡を受け、シニアカップルが再び訪ねてくる。
そしてまずカサリンが口火を切る。「核戦争にも負けない終の棲家、それはここから5時間ドライブしたトカゲ山の核シェルターマンションです」と。
「えっ、トカゲ山って?」
婦人が気持ち悪そうな表情に。その反応に待ってましたと、紺王子が熱く語り始める。
「確かにトカゲは多いです。ということは、白亜紀に誕生し、氷河期を超え現代までこの場所で生き延びてきた。なぜならここの岩石は2億万年前マントルが地底深くゆっくりと冷やされ、隆起したかんらん岩でして、低吸水で頑丈。その上に美しゅうございます。この岩山に穴を掘り、核シェルターがはめ込まれてますので、たとえ核戦争が起こっても生き延びられますよ。こここそ究極の終の棲家です」
こう説得されれば、あとは現地を見るしかない。
早速翌朝4人は山に向かって出発。幾つもの山を越え、雪はどんどんと深くなっていく。もちろん四輪駆動車にチェーンを装着しなければ前進できない。
それでも何回か谷底へと滑り落ちそうなヒヤリもあった。だが強運なのか無事マンションに到着する。
作品名:ツイスミ不動産 物件 X 作家名:鮎風 遊