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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第四話

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夫はひょっとして強い劣等感の持ち主なんじゃないかと疑った。
これまで気に留めなかったけど、男性は劣等感を隠すために威勢を張ると思えた。
女は正直である。嘘もつくけど、言いたいことは本当の気持ちだ。

着けていたスキンを取ると、自分で拭いて処理して、夫は自分の部屋に行った。
いつもそうだ。もう少し傍に居て欲しいと思う私の気持ちなど感じない人だ。今日は早く出て行って欲しいと願ったが、もうしばらくはこういうことも無いだろう。
私自身も嫌な思いをさせられるような行為はゴメンだとも思い始めていた。

男の人ってみんなこうなのかと考えると、女ざかりの自分の気持ちをどうすればよいのかなんて考える。やはり、夫が言うように心の奥では淫乱な気持ちが潜んでいて、押さえつけても押さえつけても出てきたいと願う欲望が強くなってゆくのだろうか。

月が替わって、体験したエアロビクス教室のレッスン日がやって来た。
スポーツ用品店で買ったジャージの上下をバッグに入れて、車で向かう。
先生から新しい仲間ですと紹介されて、一番後ろで先生の動きに合わせて身体を動かす。

一回目はあっという間に時間が過ぎた。もう外はセーターが要る季節なのに、汗が噴き出していた。
シャワールームで汗を流していると仲間から声を掛けられた。

「内田さん、失礼ですけどお幾つになられますの?」

見ると先ほど一緒に踊っていた一人だった。

「ええ、お恥ずかしいのですが50歳ですの」

「本当ですか?私より上だなんて信じられません」

「あら、お世辞でも嬉しいですわ」

「ご謙遜を・・・ねえ、この後カフェで少しお話ししません?」

「はい、いいですわね。是非」

声をかけてくれたのはもう一年ほど通っているという、片桐恵美子と名乗る人だった。

「初めましてよね、片桐恵美子って言います。歳は45歳です」

化粧をして、素敵なミニのワンピース姿に着替えていた恵美子はそれなりに自分より若いと思える姿に感じられた。

「素敵ね、短いスカートなんて私には穿けないわ~」

「内田さんなら絶対に似合いますよ。思い切って買われたらどうですか?」

「夫が何というか・・・」

「ええ?そうなの。仲がよろしいのね」

「いえ、その逆なの。怒られるって思うから」

私はそう言いながら本当は恵美子のような服装をしてみたいと思わないことは無かった。