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柴犬まるの酒屋日記

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話は年明けから始まる。
父ちゃんが死んでから、母ちゃん1人では店は無理や。
おぉ‥母ちゃんの事も紹介せんとな。

智樹の母ちゃん‥
千鶴子さんや。父ちゃんとは仲がよぉて‥
【おしどり夫婦】って近所で評判やった。
母ちゃんは父ちゃんがおらんようになってから、
いつも泣いてた。お客さんの前では泣かんけど。
夜にいつも泣いてた‥

父ちゃんが生きてた頃は、オイラは外で寝てた。
でも父ちゃんがおらんようになってから、
オイラは家の中で寝るようになった。
母ちゃんがオイラの頭をなでながら言った‥
「寂しいねん。まる‥そこにおって」

うん。母ちゃん‥
オイラは母ちゃんのそばにいるで。
母ちゃんは店が終わったら、仏壇の前に座って。
お経を読みながら、泣いてるんや。
きっと‥父ちゃんの事思い出して泣いてるんや。
オイラはそう思った。

母ちゃんも長年‥酒屋の奥さんしてるけど。
力仕事はやっぱり辛いみたいや。
疲労が重なって、とうとう腰を痛めてしもうた。
母ちゃんはお得意さんの配達を休むわけにいかん!っていうけど。
お医者さんに無理したらあかん!って言われたそうや。

母ちゃんは、電話の前に立っては‥
「‥‥無理やわ。あの子やって仕事あるし。でも‥」
そんな事を何回も言いながら、やっと受話器を持った。

それから数日後‥
オイラが店先で看板犬の仕事してると‥
ヒョロヒョロした牛乳瓶の底のような眼鏡をかけた男が店の前に立った。
でも‥店に入るのか入らへんのか?
店の前を何回もウロウロしたから‥オイラは警戒した。

コイツぅ!何やねん!
オイラんちの店に何か用か?
オイラはヒョロヒョロ男に【ワンワン!】と
思いっきり吠えたら、ヒョロヒョロ男は驚いて尻もちついたぞ。

店の奥から‥母ちゃんが這って来た。
(腰が痛くて歩かれへんさかい)
「まるぅ!何吠えてるんや‥誰か来たん?」
オイラは母ちゃんに向かって【ワンワン!】と吠えた。
(母ちゃん!怪しいヤツいてる!)

「誰やの?ん‥あぁ!智樹ぃ!」
(ともき‥誰やソイツ?)
そのヒョロヒョロ男は‥ノソッと起き上がって。

「あぁ‥ビックリしたぁ。この犬が柴犬まる?母ちゃん」
「うん。まるぅ!息子の智樹やで‥アンタ初めてやな。ご挨拶しぃ」
(エェ‥コイツが父ちゃんと母ちゃんの息子?このもやしみたいなんが?)
オイラは信じられへんかった。
作品名:柴犬まるの酒屋日記 作家名:楓 美風