HAPPY BLUE SKY 婚約時代 5
ディナーが終わってから、一美を最上階のラウンジに誘った。
「クゥ‥車乗って来てるんだよ。ダメだよ‥呑んだら」
一美は驚いていたが、俺はふたごの弟をもうすでにエサで釣っていた。
「一美さん‥こんなホテルに来ることは滅多にないんだぜ。ゆっくりして帰ろう。コタならふたごの弟君が一緒に寝てくれるって‥」
俺は一美の耳元に口を寄せた。
「部屋取ったんだ。お泊りして帰ろう‥婚約時代の想い出にさ」
クゥのこの言葉に私は、耳まで赤くなったのは言うまでもない。
ベッドの中で、俺は一美の肩を抱き寄せた。
「ホント、長期公務から帰って来て慌ただしかったな。一美ともっとこんな所来たかったぞ。一美‥カウントしてるか?」笑いながらクゥは言った。
「わ‥私に言えって言うの?言えないってわかってて聞くんだね。クゥ」
「うん。聞いて、一美の赤くなった顔見たい俺だからね」
俺は一美の頭を手で軽くクシャクシャした。
それから数日後‥ファイン支部でも年末の【朝礼式】が行われた。去年は俺も一美もこの朝礼式に出なかった。一美は朝礼式の前に休暇に入り、俺は海外公務中だった。また朝礼式に当たっている部署は朝礼式の用意の為に、早朝から出勤し式場の準備をする。アーノルド少佐のくじ運がいいのか、また諜報班が朝礼式の当番に当たっていた。
俺とダフリン中佐は、朝礼式の準備が進んでいるか隣接のホールに様子を見に行った。またダフリン中佐は徹夜明けで何回も欠伸をした。
「‥‥サボって仮眠室で寝たいよ。俺」
「サボれるものなら、サボってみろ。諜報班の席はお偉方の真正面だ」
「ッゲ!席もアーノルド少佐が引いたのか?アイツ‥とことんくじ運悪いな」
「うん。直観力と推察力はピカイチなんだけどな。おぉ‥前から目の覚める集団が来たぜ。ダフリン中佐‥剣流会オフィスのレディ達だ」
ダフリン中佐は手で髪の毛を整え、軍服のネクタイを手でなおし、笑顔を作った。(-_-;)
目の前を集団で走って来たのは、剣流会オフィスの選手達だった。みんなキャップを被って、お揃いのジャージを着てジョキング中だった。その中の1人が俺とダフリン中佐を見て挨拶した。また笑顔で!
「おはようございます!クゥ中佐・ダフリン中佐!」後の選手達も同じように笑顔で挨拶した。俺達も挨拶を返した。
「ごくろうさん!頑張れよぉ」手を振って、彼女達を見送った。
ダフリン中佐がニヤけたツラで言った。
「先頭の女子がさくらこちゃんで、後ろの2人がみやこちゃん・このみちゃんだな。さくらこちゃんは朝からさわやかだね!目が覚めたぞ」
「よかったな。俺も同意したいけど、したらケツ蹴られそうだから言わないぞ。突っ込むなよ!おまえ」ダフリン中佐にクギを刺した俺だった。
「し‥しませんよ。おまえのフィアンセ超怖いもん。優しい顔立ちしてからヤルこと超キツイし。裏番のカッジュさんの名前は今もご健在だもんな。あ、そういや今の集団にいなかったな?」
「うん‥いなかった。まだマンションで寝てるよ!朝練も最近行ってないぞ。年末年始の練習に、年明けの合同合宿もパスって俺に言ったぞ。よく中村先生と藤村理事長先生が許可したもんだよ」
「そ‥そーなのか?じゃマジなのか?引退するって」
「俺からは何とも言えん。エリア外だからな」ダフリン中佐は不思議に俺の顔を見た。
私はロッカーでカバーのかかった軍服を取り出した。今日は朝礼式で剣流会オフィスから中村先生・藤村理事長先生と3人で出席する事になった。先生達はスーツだが、私はNATOC・陸軍下士官なのでセレモニーの時は軍服を着用する。軍服の着用はこれで3回目である。剣流会オフィスの発足式と訓練校の入校式に着た。カバーを外し、腕章と階級バッジを確認して、着替えた。
「うん‥チェックよし」
私はロッカーのミラーでチェックをし、オフィスに戻った。さとが白衣姿でオフィスに入って来て、私の姿を見て言った。
「一美姉ちゃん!超カッコイイな。さっきクゥ兄貴も見たぞ!制帽被ったらまたキリリッとして、通り過ぎる時にどよめきの声が上がったぞ。ッデェ」
さとは中村先生に平手でオシリを叩かれた。藤村理事長先生は私の顔を恐々覗いてこう言った。
「な‥今から朝礼式だからさ、ご機嫌なおしてくれ。な!さと!謝れ」
さとは咄嗟に自分の頭を手でガードした。私に殴られると思ったらしい。
「藤村理事長先生‥私怒ってませんよ。クゥ中佐が制服制帽姿で歩いたら、どよめきの声はいつもです。行きますよ!さとぉ!早く着替えなさい。シェービングして髪もなおして」
さとは鳩が豆鉄砲を食らったような顔しながら、奥のロッカー室に入っていた。これを見た剣流会オフィスのスタッフは口を押えて笑っていた。
作品名:HAPPY BLUE SKY 婚約時代 5 作家名:楓 美風