HAPPY BLUE SKY 婚約時代 5
1−2
ファイン支部を出ると、雪がちらついていた。今年初めての雪だった。私は手を出して、舞い落ちてくる雪を手に受けた。
「今年初だね!クリスマスに雪降らないかな?ホワイト・クリスマスっていいよね!あぁ‥そうだ。帰りに買って帰ろう!我が家にはなかったぞ」
私はいつもの帰り道とは逆の方向に歩き出した。
「‥帰り道と逆の方向に行ったって?アイツ」
俺はキッチンでマグカップを洗っていたら、後ろからアーノルド少佐が声をかけてきた。
「はい。何だかウキウキ・ワクワクの顔でショッピング・モール街の方に歩いて行きましたよ。フィアンセの一美さん」
「また‥何か買いに行ったな!今度は何だ?」ため息をついた俺だった。
「ため息をついていたけど、顔は緩んでたぞ」
「こんな風にか?」ベン副主任はワザとニヤけた顔をした。
「うんうん。口元緩めてな!また口実にマンション行くんだぜ。おまえ!何買ったんだ?またおもちゃか?って」
「裕次郎お父さんが帰ったから、もう遠慮ナシにマンションに行ってディナーを一緒に食べてイチャついてるんだぜ。クゥ中佐は!」
こんなことを言ってるのは、マブダチのミラド先生だ。最近クゥが呑みに付き合わないから、スネているらしい。
「ミラド先生!今はしょうがないッすよ。もう結婚式まで2ヶ月切りましたからね。忙しいんですよ!ね‥俺達が遊んであげますから」
「わかったよぉ!じゃ‥仕事引けたら呑みに付き合え!約束だぞ。アーノルド少佐達」ミラド先生は部室を出て行った。
それから、1時間後に俺は一美のマンションのインターフォンを押したが応答がなかった。おかしいな‥室内にはライトが点いてるし、入浴中かと思い管理人さんに挨拶して、エレベーターに乗り込んだ。ドアを開ける前にもう一度、玄関のインターフォンを押した。
「一美ッ!俺だ!クゥだけど開けるぞ」それでも返事がなかった。
俺は合鍵を取り出してドアを開けたら、廊下をコタが爆走していた。コタは口に何かくわえてるみたいで、またそれも嬉しそうに廊下を走り回っていた。奥から一美の怒る声が聞こえた。
「こ‥コタ!!返しなさい。ダメだってば!それがなきゃ完成しないでしょう!」追っかけてきた一美が言った。
コタは俺の後ろに逃げ込んできた。そして俺に尻尾を振った。
「コタぁ!!」俺の低い声で怒ってやった。コタは口にくわえていたモノを放した。
俺は一美の手から、金の星を受け取り、クリスマスツリーの一番上に取りつけた。
「脚立登ってつけようとしたの。ちょっと背が足りなくて、背伸びしたら手に持っていた星を落っことしたの。それをコタが見ていてぇ」
「コタにしちゃ、グッドなオモチャだよな。で、部屋中爆走してたのか?」
「うん。あぁ‥これもつけてぇ。うちはねぇ‥さととふたごでしょ。一つっていうワケにはいかなくて。亡くなった母さんがね、金の星をもう一つ作ってくれたの。今年はさともいるし、私もつけてみようと思って買っちゃった」
俺にもう一つの金の星を手渡した一美だった。
「そうか‥ふたごだとそういう風に子育てするんだな。君とさとは小さい頃から平等だったんだな。俺は1人っ子だからな、そういう経験はないんだ。羨ましいな‥兄弟姉妹がいるってそんな感じか」
「うん。私達にも子供が授かる事ができたら、姉妹と兄弟欲しいね」
「よ‥4人かぁ。俺のサラリーで養えるかな?」
「私も働くよん。子供ができても、剣流会の先生は辞めないよ。選手生活はいつまでも続かないけど、他の道はまだあるもん」
俺は脚立から降りて、一美を軽く抱きしめた。
「うん。まだ20代半ばの君だ‥色んな選択肢があるさ。その選択肢に迷う事があったら、俺に相談してくれ。君の力になれるように俺も頑張るよ。2人で力を合わせたら、きっといい答えがでるさ」
「うん、そうだよね。頼りにしています‥夫のクラウス・デ・ウィル・ボンバードさん」
「いいよ。頼ってくれ‥」俺と一美はツリーの前で唇を合わせた。
数日後‥ファイン支部の正面玄関は賑やかだった。クリスマスはステディやパートナーと過ごしたいものだ。NATOC職員達を迎えに来たステディやパートナーの車などで、正面玄関前は守衛官が交通整備をしたぐらいだ。また剣流会スタッフも同様に、正面玄関前に迎えに来たステディ達と足早にファイン支部を後にした。
私はオフィスフロアーの戸締りをして、守衛官に鍵を渡した。そして、1階下の諜報班のフロアーに降りて行った。中村先生から預かったケータリングのディナーを届けに行くのだ。今日の宿直者のゲイル・モンド・イルディ先輩達にディナーの入ったボックスを手渡した。
「うちの中村先生がどうぞと‥ゲイル先輩の好きなフィッシュ系のお料理ですよ。美肌にいいコラーゲン入り!」
「まぁ!嬉しい‥コラーゲンって肌にいいのよね。中村先生にお礼を言っておいてね。あぁ‥そのワンピかわいい!小花模様じゃない。いいカラーねぇ」
ゲイル先輩は私の着ていたワンピを興味津々で見ていた。
「こらぁ!ゲイルぅ‥早く解放してやれ。中佐室のデスクで今か今かと待ちわびているんだ」モンド先輩が私の手を引っ張った。
「ボンバード中佐!お迎えですよん!フィアンセの一美さん」
イルディ先輩の声で、諜報2・3班の窓が一斉に開いた。
「かっずみちゃん!今日はどこいくの?クゥ中佐と」
「いいなぁ!俺達も同行させてくれよ」カラかいの声とヤジの声がフロアーに響いた。(-_-;)
アイツらは‥まだ見てやがる!俺と一美がパーキングに降りてからも、まだ窓から覗き見ていた。
「一美‥窓に向かってやれ。よく部下時代にしたろ?ヨル達に!舌だしてベーだ!」
「そ‥そんなことしたらまたカラかわれるよ。早く支部から出ようよ」俺の腕を掴んで一美は言った。
「そうだな。でも親父もサバけたな‥クリスマスは家でディナーかと思ったら、ホテルのフレンチのリザーブしてくれるんだ。息子の俺はこの話を聞いて非常に驚いたぜ」
「私も驚いたわ。でも嬉しい!明日ね‥お礼にパウンドケーキ焼いたの。コック長の味には及ばないけどね。みんなでお茶しましょう」
「はいはい‥じゃ行くぞ。フィアンセの一美さん」俺はゆっくり車のアクセルを踏んだ。
フレンチのフルコースは美味かった。親父こんな所よく知ってたな。海外公務でN国を長期不在にしていたのにな。この頃、一美が実家に行くたびに一緒に買い物に行ってるそうだ。執事のジィさん達から聞いたが。
この前、親父の書斎に入って驚いた。最新のノートパソコンにプリンターにデジカメまであったぞ。剣流会のシニア・パソコン教室にも通ってるらしい。(一美に聞いて初めて知った俺だ)覚えたてのノートパソコンで、どうやらネット検索をして、レストランをリザーブしたみたいだ。
「親父いつから、剣流会の教室に通ってるんだ?」
「えっとぉ‥11月半ばかな?デジカメ講座も来てたよ。クゥ中佐のお父様だね。結構‥機械好きでらっしゃいました。シニアクラスで父上は優等生ですよん。講座の先生も感心してらっしゃいました」
「親父が?」俺はこれにも驚いた。
「うん。今度はタブレットも欲しいって。スマホも挑戦したいって。好奇心旺盛だって中村先生が驚いていました」一美は楽しそうに笑った。
ファイン支部を出ると、雪がちらついていた。今年初めての雪だった。私は手を出して、舞い落ちてくる雪を手に受けた。
「今年初だね!クリスマスに雪降らないかな?ホワイト・クリスマスっていいよね!あぁ‥そうだ。帰りに買って帰ろう!我が家にはなかったぞ」
私はいつもの帰り道とは逆の方向に歩き出した。
「‥帰り道と逆の方向に行ったって?アイツ」
俺はキッチンでマグカップを洗っていたら、後ろからアーノルド少佐が声をかけてきた。
「はい。何だかウキウキ・ワクワクの顔でショッピング・モール街の方に歩いて行きましたよ。フィアンセの一美さん」
「また‥何か買いに行ったな!今度は何だ?」ため息をついた俺だった。
「ため息をついていたけど、顔は緩んでたぞ」
「こんな風にか?」ベン副主任はワザとニヤけた顔をした。
「うんうん。口元緩めてな!また口実にマンション行くんだぜ。おまえ!何買ったんだ?またおもちゃか?って」
「裕次郎お父さんが帰ったから、もう遠慮ナシにマンションに行ってディナーを一緒に食べてイチャついてるんだぜ。クゥ中佐は!」
こんなことを言ってるのは、マブダチのミラド先生だ。最近クゥが呑みに付き合わないから、スネているらしい。
「ミラド先生!今はしょうがないッすよ。もう結婚式まで2ヶ月切りましたからね。忙しいんですよ!ね‥俺達が遊んであげますから」
「わかったよぉ!じゃ‥仕事引けたら呑みに付き合え!約束だぞ。アーノルド少佐達」ミラド先生は部室を出て行った。
それから、1時間後に俺は一美のマンションのインターフォンを押したが応答がなかった。おかしいな‥室内にはライトが点いてるし、入浴中かと思い管理人さんに挨拶して、エレベーターに乗り込んだ。ドアを開ける前にもう一度、玄関のインターフォンを押した。
「一美ッ!俺だ!クゥだけど開けるぞ」それでも返事がなかった。
俺は合鍵を取り出してドアを開けたら、廊下をコタが爆走していた。コタは口に何かくわえてるみたいで、またそれも嬉しそうに廊下を走り回っていた。奥から一美の怒る声が聞こえた。
「こ‥コタ!!返しなさい。ダメだってば!それがなきゃ完成しないでしょう!」追っかけてきた一美が言った。
コタは俺の後ろに逃げ込んできた。そして俺に尻尾を振った。
「コタぁ!!」俺の低い声で怒ってやった。コタは口にくわえていたモノを放した。
俺は一美の手から、金の星を受け取り、クリスマスツリーの一番上に取りつけた。
「脚立登ってつけようとしたの。ちょっと背が足りなくて、背伸びしたら手に持っていた星を落っことしたの。それをコタが見ていてぇ」
「コタにしちゃ、グッドなオモチャだよな。で、部屋中爆走してたのか?」
「うん。あぁ‥これもつけてぇ。うちはねぇ‥さととふたごでしょ。一つっていうワケにはいかなくて。亡くなった母さんがね、金の星をもう一つ作ってくれたの。今年はさともいるし、私もつけてみようと思って買っちゃった」
俺にもう一つの金の星を手渡した一美だった。
「そうか‥ふたごだとそういう風に子育てするんだな。君とさとは小さい頃から平等だったんだな。俺は1人っ子だからな、そういう経験はないんだ。羨ましいな‥兄弟姉妹がいるってそんな感じか」
「うん。私達にも子供が授かる事ができたら、姉妹と兄弟欲しいね」
「よ‥4人かぁ。俺のサラリーで養えるかな?」
「私も働くよん。子供ができても、剣流会の先生は辞めないよ。選手生活はいつまでも続かないけど、他の道はまだあるもん」
俺は脚立から降りて、一美を軽く抱きしめた。
「うん。まだ20代半ばの君だ‥色んな選択肢があるさ。その選択肢に迷う事があったら、俺に相談してくれ。君の力になれるように俺も頑張るよ。2人で力を合わせたら、きっといい答えがでるさ」
「うん、そうだよね。頼りにしています‥夫のクラウス・デ・ウィル・ボンバードさん」
「いいよ。頼ってくれ‥」俺と一美はツリーの前で唇を合わせた。
数日後‥ファイン支部の正面玄関は賑やかだった。クリスマスはステディやパートナーと過ごしたいものだ。NATOC職員達を迎えに来たステディやパートナーの車などで、正面玄関前は守衛官が交通整備をしたぐらいだ。また剣流会スタッフも同様に、正面玄関前に迎えに来たステディ達と足早にファイン支部を後にした。
私はオフィスフロアーの戸締りをして、守衛官に鍵を渡した。そして、1階下の諜報班のフロアーに降りて行った。中村先生から預かったケータリングのディナーを届けに行くのだ。今日の宿直者のゲイル・モンド・イルディ先輩達にディナーの入ったボックスを手渡した。
「うちの中村先生がどうぞと‥ゲイル先輩の好きなフィッシュ系のお料理ですよ。美肌にいいコラーゲン入り!」
「まぁ!嬉しい‥コラーゲンって肌にいいのよね。中村先生にお礼を言っておいてね。あぁ‥そのワンピかわいい!小花模様じゃない。いいカラーねぇ」
ゲイル先輩は私の着ていたワンピを興味津々で見ていた。
「こらぁ!ゲイルぅ‥早く解放してやれ。中佐室のデスクで今か今かと待ちわびているんだ」モンド先輩が私の手を引っ張った。
「ボンバード中佐!お迎えですよん!フィアンセの一美さん」
イルディ先輩の声で、諜報2・3班の窓が一斉に開いた。
「かっずみちゃん!今日はどこいくの?クゥ中佐と」
「いいなぁ!俺達も同行させてくれよ」カラかいの声とヤジの声がフロアーに響いた。(-_-;)
アイツらは‥まだ見てやがる!俺と一美がパーキングに降りてからも、まだ窓から覗き見ていた。
「一美‥窓に向かってやれ。よく部下時代にしたろ?ヨル達に!舌だしてベーだ!」
「そ‥そんなことしたらまたカラかわれるよ。早く支部から出ようよ」俺の腕を掴んで一美は言った。
「そうだな。でも親父もサバけたな‥クリスマスは家でディナーかと思ったら、ホテルのフレンチのリザーブしてくれるんだ。息子の俺はこの話を聞いて非常に驚いたぜ」
「私も驚いたわ。でも嬉しい!明日ね‥お礼にパウンドケーキ焼いたの。コック長の味には及ばないけどね。みんなでお茶しましょう」
「はいはい‥じゃ行くぞ。フィアンセの一美さん」俺はゆっくり車のアクセルを踏んだ。
フレンチのフルコースは美味かった。親父こんな所よく知ってたな。海外公務でN国を長期不在にしていたのにな。この頃、一美が実家に行くたびに一緒に買い物に行ってるそうだ。執事のジィさん達から聞いたが。
この前、親父の書斎に入って驚いた。最新のノートパソコンにプリンターにデジカメまであったぞ。剣流会のシニア・パソコン教室にも通ってるらしい。(一美に聞いて初めて知った俺だ)覚えたてのノートパソコンで、どうやらネット検索をして、レストランをリザーブしたみたいだ。
「親父いつから、剣流会の教室に通ってるんだ?」
「えっとぉ‥11月半ばかな?デジカメ講座も来てたよ。クゥ中佐のお父様だね。結構‥機械好きでらっしゃいました。シニアクラスで父上は優等生ですよん。講座の先生も感心してらっしゃいました」
「親父が?」俺はこれにも驚いた。
「うん。今度はタブレットも欲しいって。スマホも挑戦したいって。好奇心旺盛だって中村先生が驚いていました」一美は楽しそうに笑った。
作品名:HAPPY BLUE SKY 婚約時代 5 作家名:楓 美風