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HAPPY BLUE SKY 婚約時代 2

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HAPPY BLUE SKY 5
(7)

中佐室の中では、ボンバード海軍准将こと俺の親父の笑い声が響いた。
「かわいいお嬢さんじゃないか!いやぁ‥君の部下達も気が利く事!結構結構!フフッ‥楽しみだな!クゥ中佐!これで私は失敬するよ。家に帰って執事達と歓迎のパーティの準備をせねばな!では」
親父は制帽を被って、スタスタと中佐室を出て行った。
俺は眉間に指を当てて、これからの事を思うと深いため息をついてしまった。

廊下で、私は元先輩達に両腕を引っ張られた。部長にお菓子を届けた後に稽古があるので、稽古着の上にベンチコートだった。部長室に挨拶に行くのに、稽古着で行った私も悪いのだが。まさか、中佐室にお父上である・ボンバード海軍准将が居るとはつゆにも思っていなかった。何で腕を引っ張られるかもわからず‥

「せ‥先輩方!一体何ですか?私これから体育館で稽古があるんですよ。訓練生のカリキュラムなんですよぉ。離してぇ」
右腕を掴んだアーノルド少佐が、私に再び【アーちゃん・スマイル】をして、こう言った。
「その稽古着姿も人気高いんだよ。君!見てもらえよ‥特別な人に」
「と‥特別な人って誰ですか?」
また左腕を掴んでいるツィンダー先輩が笑いながら言った。
「フィアンセじゃないよぉ。残念ながら」

じゃ‥誰なの?
私は首を傾げるばかりだ。

中佐室の前では、アーノルド少佐が何やら微笑みながら、自分の携帯電話を取り出してメールを打ち出した。怖い‥この人は何を考えているのかしら?また、他の先輩達もそれを面白そうに見ている。も‥もしかして、これは企画済みなの?すぐに返信が来たようだ。

また中佐室の中で、クゥ中佐が慌てふためいている声が聴こえた。もしや‥
「ち‥中佐室の中の方とお知り合いですか?アーノルド少佐様」
「うん。よぉく知ってますよん。学生時代によくクゥ先輩の家に遊びに行ったもん。俺」
私の顔がますます引きつったのは言うまでもない。その時だった‥中佐室のドアが開いた。

私はクゥ中佐の横で縮こまってしまった。だって、稽古着姿にベンチコートで今から稽古だから、ほぼノーメイクだったから。クゥ中佐と私の前に座っているのは、ボンバード海軍准将ことクゥ中佐のお父上なのに。

それなりに時間があったら、正装とまでいかないけど、それなりのカッコができたのに。メイクも営業メイクできたのに。そんな事を思うと、私の顔はますます赤くなった。
「稽古着姿も美しいですな。ミズ・立野」
笑顔で私に言ってくれた、ボンバード海軍准将だった。私はちゃんと話せたのだろうか?服装やメイクの事もあるのに、またクゥ中佐のお父上と言う事もあって緊張してしまった。
気がつくと、クゥ中佐に手を引かれてボンバード海軍准将に頭を下げていた。

稽古を終え、私は速攻でシャワーを浴びて剣流会オフィスのロッカールームに走った。ロッカーに置いてある服達でいいのか調べなければ?

中佐室を出る時に、クゥ中佐のお父上は私に言った。
「もしよろしければ、今日ディナーでもいかがな?一美さん!あぁ‥愛犬のコタロウ君も連れていらっしゃい。私も犬は大好きだから」と‥
こ‥コタも?
私はクゥ中佐の顔を見た。クゥ中佐はため息をつきながら、うなづいた。

ロッカーの中の服を見て‥私は隣で着替えているスタッフに聞いた。
「これ軽すぎ?」
「エー‥どれどれ?」
ロッカーの中を覗き込むスタッフ‥
「形式ばったお食事?」
「‥‥うん。そのぉ‥」
私の顔が赤くなったのをスタッフは見逃さなかった。
「クゥ中佐とデート?」
「ううん。デートならこれでもいいけど。親あり」
「お‥親ありか。これにさ、あぁはい!よければ」
スタッフは、自分のロッカーから取り出して私の手に渡してくれた。

俺はリビングの置時計に目をやった。親父と一美が楽しそうに話している。また、コタは親父からプレゼントでもらった、知育玩具のコングが気に入り、オヤツのチーズを出すのに夢中になっている。また、どこで情報を仕入れたのか‥一美の趣味の写真や、街歩きや仕事の事を聞いて話題は尽きなかった。また一美も、最初は緊張してたのに。今じゃその緊張も解れて、笑顔で親父と話している。
「楽しいお話の途中ですけど‥おふた方」俺は2人に話しかけた。

喋り疲れたのか、一美は帰り道は眠たそうだった。赤信号で停まるブレーキの音を聞いて、目をこすっていた。
「すまんな‥仕事と稽古で疲れてるのにさ。親父が子供みたいにはしゃいじゃってさ」
「ううん。私も楽しかった‥でも、よく私の事ご存じだったわ‥だぁれ?情報提供者」
「アーちゃん・ミラド先生だ。ミラド先生は同期でもあるけど、俺とはジュニア(中学校)からのダチだ。アイツもアーも俺の家によく遊びに来たよ。親父が居る時にもな!俺の部屋に来る前に、支部内で2人に逢ったそうだ。で‥作戦が出来上がった」
「なーるほど。あの2人がタッグ組めばできるか。で‥ハメられたのは私達」
「そういうことだな。今日の味をしめて、所用を作ってはチョクチョク帰って来そうだよ。あの親父‥あぁ!言っとく‥スィーツに釣られて親父の誘いにホイホイ乗るなよ。一美!わかってるだろうな?俺の事を根ほり葉ほり聞くなよ」
クゥ中佐にしっかりクギを刺された私だった。

それから支部内で、ボンバード海軍准将ことお父上と3回ほど逢った。中村先生と一緒の時にも逢い、お互いを紹介した。また中村先生は私に聞いた。
「まだお逢いしてないのか?親と」
「はい。クゥ中佐がサマーバケーションの時にでも顔合わせをしようかと。お父上もサマーバケーションの時がいいですよね?明後日帰国されるって」
「うん‥一美さんのお父上にもお逢いしないとね。また都合を聞いておいて欲しい」
その時だった。中村先生の携帯が鳴った。

「何てタイミングのいいヤツだ。ほら」
私に自分の携帯の着信画面を見せた中村先生だった。その人物とは、私の父・立野裕次郎だった。横に居たお父上は私の顔を見た。そして、私のスーツの上着の裾を引っ張った。

その日の夕方、親達は市内のレストランで対面しご挨拶をした。その時はまだクゥ中佐の研究室入室が、来年の1月からだと思っていたので。次回の話し合いで具体的な結婚式の形式や日にちを話し合いするつもりだったのだ。ところが‥予定が早まった。

そうそう‥言い忘れていたが。うちの父は、どこからコネを使ったのか‥剣流会の顧問になっていた。顧問になれば何かとN国に入国しやすいからだ。また武道連盟やグループの仕事はどーしたんだ?私とさとは首を傾げるばかりだった。あの人は、言い出したら利かないし、また周りもそれに合わせるしかないのだ。子供ながら、我親の性格には辟易していた私達だった。

クゥ中佐と私は周りには婚約した事を報告していたが、式やパーティの事はまだ報告していなかった。両家の親が登場した事で(諜報1班には大バレ・剣流会にも)急遽予定を繰り上げる事になった。これでまた散々カラかわれるクゥ中佐と私だった。

うちの親・裕次郎さんはまたとんでもない事を言い出した。3回目の会食の時だった。この時は、中村先生ご夫妻も一緒だった。