HAPPY BLUE SKY 婚約時代(1)
HAPPY BLUE SKY 5
(6)
7月に入って、一度にN国には夏がやってきた。道を歩くだけで汗が額からにじみ出るほど、暑くなっていた。私は制服の上着を脱いで、手に持った。
「あっつぅ‥もう限界だ。あぁ‥ノドが渇いた」
また向かい側の道路には、オープンカフェでコールド・ドリンクを美味しそうに飲んでいる人の姿が私の目に入った。
「ダメだ!一度に何杯も飲むな。また腹が痛くなったらどーすんだ?」
「エェ‥大丈夫だよ。ね!もう1杯だけぇ‥ノドが渇いてるし」
「ったくぅ‥もう!俺のアイスコーヒー半分やるから!これでガマンしろ」
そう言って、クゥは自分のアイスコーヒーを私にくれた。
「甘いなぁ‥やっぱり!クゥ中佐‥やっぱりニック・ネーム改名した方がいいぞ。コールド・クゥからスィート・クゥに!」
クゥの横の席のミラド先生は、笑いながら言った。また、私はもらったアイスコーヒーを堪能していた。ブラック派のクゥのアイスコーヒーにフレッシュとシロップを足して。ミラド先生もブラック派なので、ミラド先生の分まで入れたのは言うまでもない。
「ウゲェ‥相変わらずの甘党だな。こいつ‥それは怒らんのか?クゥ中佐」
「それも言っても利かないから。こいつ!」
「糖分摂取はいいんです。私の頭の栄養分ですから!ッタァ」
後ろから私の頭を叩いた人物がいた。
「どうして、おまえはそう限度がないんだ!あまり娘を甘やかさないで欲しいですな。クゥ中佐!」
ドスの効いた?イエ‥凄味のある声でクゥ中佐を怒ったのは、私の父の立野裕次郎だった。
「申し訳ございません。立野顧問」
クゥ中佐は椅子から立ち上がって立野顧問こと、うちの父に頭を下げた。横のミラド先生は口に手を当てて笑っていた。
「何しに来たんですか?先々週も入国なさったでしょう?顧問」
私は剣流会のオフィスに帰る道で、父に聞いた。
「そんな言い草はなかろう?そもそも‥おまえ達の報告が突拍子もないからだ」
「と‥突拍子もないって言われても。上層部の命令には逆らえませんよ!元警察官ならおわかりでしょう?」
「わかっとるわ!そんなことは!私にも考えている事があったのに‥」
ブチブチ‥文句を言う父であった。
父が文句を言うのは‥こんな事があったからだ。
少し話は前後するが、1ヶ月前に時を遡ろう。
海外公務の休暇を終え、クゥは正式に防衛大研究室の入室を上層部と防衛大教授に承諾の返事をしたのだが、クゥ的には来年1月からの入室と聴かされていたので、これから中佐業務の仕事の調整をするつもりだった。ところが‥
「エ‥お話では来年からのはずでは?」
大佐室に呼び出されたクゥは、大佐からの話に驚いたそうだ。
「うん。そのつもりだったけどな‥何でも教授が申請していたXXXXの搬入が早まったそうだ。その物質を使って少しでも早く研究を進めたいそうだ。クゥ中佐の頭の中の知識が欲しいらしい。中佐業務と兼業って事も充分承知しているが、何とか仕事を調整して入室を早めてもらえないだろうかってな。さっき教授から電話がかかってきたんだ」
「そうですか‥」
クゥ中佐は上層部からの命令は【NO】とは言えない事は充分に分かっている。また防衛大の研究室も行ってみなければ、わからない事もあった。大佐の許可を得て、その日の午後に防衛大の教授を訪ねて、話を聞いた。それからすぐに、私に連絡を取った。
クゥ中佐の話を聞いて、手に持っていた焼きたてワッフルを落とした私だ。
「か‥一美ッ!」
クゥが咄嗟に手を伸ばして、落ちたワッフルをキャッチした。
「な‥なぁに?ソレ」私はこう言うのが精一杯だった。
「す‥すまん。俺もこうなるとは思わなかったんだ」
またワッフルを私の手に持たせて、頭を下げたクゥだった。
教授の話によると、来年1月からの入室が早まって10月からになったこと。また11月から海外公務で、教授と一緒に世界各地のNATOC防衛大学を訪問することになったそうだ。期間は2ヶ月で終わればそこからは、研究・勉強・試行実験漬けになるらしい。研究が始まれば、N国を離れるワケにはいかない。
「10月って後3ヶ月じゃない。中佐業務どーすんの?この前話してくれた時に、9月にA国でカリキュラム受けて、XXX管理者の資格取るって」
「うん。でも、特別ご配慮があって防衛大の研究が済んでから受講できるようになったんだ。それはいいんだけどさ。一美ぃ‥どうする?この前の話‥」
クゥは眉間に指を当てて、深いため息をついた。
海外公務から帰って来て、結婚式をしようと決めた私とクゥだったが。その時点では、互いの仕事スケジュールを考慮して、半年後から1年後を目途に計画をしたが、サマーバケーションの時に、親に話そうと思ってたのだが。
「‥‥どーしよぉ。クゥ」
私もクゥと同じように、深いため息をついたのは言うまでもない。
ところが‥事態は急転した。
クゥ中佐は、先程まで第2会議室で中佐会議に出席していた。会議が終わった30分後には、また地下1Fのミーティングルームで【支部内連絡会議】があった。その30分の間に、中佐室に戻って少しでも業務を片付けようと思い、廊下を急ぎ足で歩いていた。中佐室のドアに手をかけたところで、後ろから声をかけられた。振り向くと‥
「ボ‥ボンバード海軍准将!お疲れ様でございます」
クゥ中佐はボンバード海軍准将に向かって、直立不動の敬礼をした。そう‥ボンバード海軍准将は、クゥ中佐のお父上である。
「うむ。」息子に敬礼を返した父・海軍准将だった。
「どうしたんですか?一体」
クゥ中佐は、ボンバード海軍准将の前にコーヒーカップを置いた。
「うん、こちらファイン支部に所用があってな。息子の顔でも見て帰ろうかと思ってな」
「‥‥本当ですか?」
「おまえは、親を信用せんのか?」
「そうじゃないですけど、執事のジィさん達の話を聞いて無理に支部に所用作ったんじゃないんですか?本当のところは‥」
この時、クゥ中佐の右手は少しワナっていたそうだ。
「バレたか。紹介してほしいね‥君のフィアンセ!クラウスッ!順序が逆じゃないかね?ボンバード家次期当主であるんだよ。君は」父上に睨まれたクゥ中佐だった。
「も‥申し訳ございません。サマーバケーションの時にでも紹介しようかと思ってましたので」
「言い訳はよろしいッ!聞けば同じ支部内に居るそうじゃないか。退社後にぜひお会いしたいものだね!わかったかね?クラウス・デ・ウィル・ボンバード中佐」
「で‥でも、彼女の都合もありますし。急には‥イエ‥手配します。ボンバード海軍准将」
クゥ中佐はまた立ち上がって敬礼をした。父・ボンバード海軍准将は満足そうにうなづいて、コーヒーに口をつけた。
中佐室のドアの向こう側には、アーノルド少佐がクゥ中佐とボンバード海軍准将との会話に聞き耳を立てていた。あの【アーちゃん・スマイル】をしてたそうだ。後の事を考えるだけでも恐ろしい。(~_~;)
(6)
7月に入って、一度にN国には夏がやってきた。道を歩くだけで汗が額からにじみ出るほど、暑くなっていた。私は制服の上着を脱いで、手に持った。
「あっつぅ‥もう限界だ。あぁ‥ノドが渇いた」
また向かい側の道路には、オープンカフェでコールド・ドリンクを美味しそうに飲んでいる人の姿が私の目に入った。
「ダメだ!一度に何杯も飲むな。また腹が痛くなったらどーすんだ?」
「エェ‥大丈夫だよ。ね!もう1杯だけぇ‥ノドが渇いてるし」
「ったくぅ‥もう!俺のアイスコーヒー半分やるから!これでガマンしろ」
そう言って、クゥは自分のアイスコーヒーを私にくれた。
「甘いなぁ‥やっぱり!クゥ中佐‥やっぱりニック・ネーム改名した方がいいぞ。コールド・クゥからスィート・クゥに!」
クゥの横の席のミラド先生は、笑いながら言った。また、私はもらったアイスコーヒーを堪能していた。ブラック派のクゥのアイスコーヒーにフレッシュとシロップを足して。ミラド先生もブラック派なので、ミラド先生の分まで入れたのは言うまでもない。
「ウゲェ‥相変わらずの甘党だな。こいつ‥それは怒らんのか?クゥ中佐」
「それも言っても利かないから。こいつ!」
「糖分摂取はいいんです。私の頭の栄養分ですから!ッタァ」
後ろから私の頭を叩いた人物がいた。
「どうして、おまえはそう限度がないんだ!あまり娘を甘やかさないで欲しいですな。クゥ中佐!」
ドスの効いた?イエ‥凄味のある声でクゥ中佐を怒ったのは、私の父の立野裕次郎だった。
「申し訳ございません。立野顧問」
クゥ中佐は椅子から立ち上がって立野顧問こと、うちの父に頭を下げた。横のミラド先生は口に手を当てて笑っていた。
「何しに来たんですか?先々週も入国なさったでしょう?顧問」
私は剣流会のオフィスに帰る道で、父に聞いた。
「そんな言い草はなかろう?そもそも‥おまえ達の報告が突拍子もないからだ」
「と‥突拍子もないって言われても。上層部の命令には逆らえませんよ!元警察官ならおわかりでしょう?」
「わかっとるわ!そんなことは!私にも考えている事があったのに‥」
ブチブチ‥文句を言う父であった。
父が文句を言うのは‥こんな事があったからだ。
少し話は前後するが、1ヶ月前に時を遡ろう。
海外公務の休暇を終え、クゥは正式に防衛大研究室の入室を上層部と防衛大教授に承諾の返事をしたのだが、クゥ的には来年1月からの入室と聴かされていたので、これから中佐業務の仕事の調整をするつもりだった。ところが‥
「エ‥お話では来年からのはずでは?」
大佐室に呼び出されたクゥは、大佐からの話に驚いたそうだ。
「うん。そのつもりだったけどな‥何でも教授が申請していたXXXXの搬入が早まったそうだ。その物質を使って少しでも早く研究を進めたいそうだ。クゥ中佐の頭の中の知識が欲しいらしい。中佐業務と兼業って事も充分承知しているが、何とか仕事を調整して入室を早めてもらえないだろうかってな。さっき教授から電話がかかってきたんだ」
「そうですか‥」
クゥ中佐は上層部からの命令は【NO】とは言えない事は充分に分かっている。また防衛大の研究室も行ってみなければ、わからない事もあった。大佐の許可を得て、その日の午後に防衛大の教授を訪ねて、話を聞いた。それからすぐに、私に連絡を取った。
クゥ中佐の話を聞いて、手に持っていた焼きたてワッフルを落とした私だ。
「か‥一美ッ!」
クゥが咄嗟に手を伸ばして、落ちたワッフルをキャッチした。
「な‥なぁに?ソレ」私はこう言うのが精一杯だった。
「す‥すまん。俺もこうなるとは思わなかったんだ」
またワッフルを私の手に持たせて、頭を下げたクゥだった。
教授の話によると、来年1月からの入室が早まって10月からになったこと。また11月から海外公務で、教授と一緒に世界各地のNATOC防衛大学を訪問することになったそうだ。期間は2ヶ月で終わればそこからは、研究・勉強・試行実験漬けになるらしい。研究が始まれば、N国を離れるワケにはいかない。
「10月って後3ヶ月じゃない。中佐業務どーすんの?この前話してくれた時に、9月にA国でカリキュラム受けて、XXX管理者の資格取るって」
「うん。でも、特別ご配慮があって防衛大の研究が済んでから受講できるようになったんだ。それはいいんだけどさ。一美ぃ‥どうする?この前の話‥」
クゥは眉間に指を当てて、深いため息をついた。
海外公務から帰って来て、結婚式をしようと決めた私とクゥだったが。その時点では、互いの仕事スケジュールを考慮して、半年後から1年後を目途に計画をしたが、サマーバケーションの時に、親に話そうと思ってたのだが。
「‥‥どーしよぉ。クゥ」
私もクゥと同じように、深いため息をついたのは言うまでもない。
ところが‥事態は急転した。
クゥ中佐は、先程まで第2会議室で中佐会議に出席していた。会議が終わった30分後には、また地下1Fのミーティングルームで【支部内連絡会議】があった。その30分の間に、中佐室に戻って少しでも業務を片付けようと思い、廊下を急ぎ足で歩いていた。中佐室のドアに手をかけたところで、後ろから声をかけられた。振り向くと‥
「ボ‥ボンバード海軍准将!お疲れ様でございます」
クゥ中佐はボンバード海軍准将に向かって、直立不動の敬礼をした。そう‥ボンバード海軍准将は、クゥ中佐のお父上である。
「うむ。」息子に敬礼を返した父・海軍准将だった。
「どうしたんですか?一体」
クゥ中佐は、ボンバード海軍准将の前にコーヒーカップを置いた。
「うん、こちらファイン支部に所用があってな。息子の顔でも見て帰ろうかと思ってな」
「‥‥本当ですか?」
「おまえは、親を信用せんのか?」
「そうじゃないですけど、執事のジィさん達の話を聞いて無理に支部に所用作ったんじゃないんですか?本当のところは‥」
この時、クゥ中佐の右手は少しワナっていたそうだ。
「バレたか。紹介してほしいね‥君のフィアンセ!クラウスッ!順序が逆じゃないかね?ボンバード家次期当主であるんだよ。君は」父上に睨まれたクゥ中佐だった。
「も‥申し訳ございません。サマーバケーションの時にでも紹介しようかと思ってましたので」
「言い訳はよろしいッ!聞けば同じ支部内に居るそうじゃないか。退社後にぜひお会いしたいものだね!わかったかね?クラウス・デ・ウィル・ボンバード中佐」
「で‥でも、彼女の都合もありますし。急には‥イエ‥手配します。ボンバード海軍准将」
クゥ中佐はまた立ち上がって敬礼をした。父・ボンバード海軍准将は満足そうにうなづいて、コーヒーに口をつけた。
中佐室のドアの向こう側には、アーノルド少佐がクゥ中佐とボンバード海軍准将との会話に聞き耳を立てていた。あの【アーちゃん・スマイル】をしてたそうだ。後の事を考えるだけでも恐ろしい。(~_~;)
作品名:HAPPY BLUE SKY 婚約時代(1) 作家名:楓 美風