HAPPY BLUE SKY カッジュ新部署へ 2
【カッジュ‥新部署へ(2)】
カッジュこと、一美の父親が姿を現しました。この親子は仲直りができるのでしょうか?クゥと中村先生達も奮闘します。>
「父さん‥お久しぶりです。ご無沙汰致しまして申し訳ございません」
瑞穂ネェが父さんの前で手をついて頭を下げた。父さんの拳が震えていた‥でも振り上げれなかった。両サイドから中村先生と理事長先生に拳を押え込まれていたから。
「瑞穂ッ!一美の態度も気に入らないが、おまえの態度がもっと気にくわん!何が不満で家を出た?おまえには立野家の長女としての自覚はあるのか?」
中村先生は瑞穂ネェにうなづいた。
「今日はこの場で私も言いたい事を言いますよ。私‥ううん。私達子供3人から父さんに聞きたい事があります。答えて頂けますよね?父さん」
「‥‥何を聞きたい?おまえは私の問いに先に答えるべきじゃないか?」
「その答えは後程お答えしますわ。私達の質問に答えてください」
私とさとは瑞穂ネェの態度に驚いていた。父さんの前で、こんな毅然とした態度の瑞穂ネェを見たことがなかった。理事長先生が私に言った‥
「瑞穂ちゃんは腹括って親父さんと話をするつもりだ。君達も腹をくくれ!」
私とさとはお互いの顔を見て、無言で理事長先生に返事をした。また‥クゥも私の目を見てうなづいた。【頑張れ】だ‥
「一美の元上官・ボンバードさんとおっしゃいましたな。何故、この席にあなたがいるのかまずそれを説明していただきたいですな。お見受けしたところ、日本語がお分かりになるようだ。また私の言ってる事は理解してるようだ」
今度はクゥに矛先を向けた父さんだった。私が言いかけたところ、クゥの手で制された。これは【待て】だ。確かにクゥは語学堪能である。世界中を仕事で飛び回っているし、どこの国も日常会話はマスターしている。当然‥今言った父さんの言葉も理解している。
「はい‥日本語も日常会話なら理解できます。確かに、もう一美さんは私の部下ではありません。中村先生の部下ですが」
その時だった‥中村先生が間を割って入った。
「クゥ中佐!もう説明しなくていい。後で一美から話をさせろ!今は先に話し合いを進める事だよ」
中村先生の言葉に、私達親子の話し合いが始まった。
まず、瑞穂ネェが父さんに聞いた。
「私達がお聞きしたい事は3つあります。まず私から聞きます」
瑞穂ネェが思っている事は、私達も思っていた事だ。私達は4歳から厳しく稽古をつけられ、その稽古の為に辛い思いをした。友達とも遊べず、何事も稽古や試合が優先で、学校行事を休まされる事もあった。それは子供心にどれほど傷ついた事か、また一般家庭みたいに両親と出かける事はなかった。また母も持病があり、母とも数える位しか出かけたことがない私達だった。父さんの答えは私達が想像した答えだった。
「それは仕方のない事だ。立野の家に生まれた者の宿命だ。私だっておまえ達と同じ4歳から稽古を始めた。おまえ達も当然じゃないか!4歳から稽古をしてるんだ。おまえ達の実力は群を抜いていただろう?誇らしくなかったのか?」
その時だった。さとがキレた‥
「そんなのちっとも嬉しくなかったよッ!俺達はそんな強さより、俺は友達との時間が欲しかった。家庭の温かさが欲しかったんだ!友達が親と出かけて楽しかったって話を聞く度に、俺は‥」
さとが声を詰まらせた。さとの言いたい事は私にも瑞穂ネェにもよく分かったから。瑞穂ネェがさとの手を軽く握った。それなのに父さんはこう言ったのだ。
「智ッ!おまえは立野の家の長男だ。何を甘い事を言ってるんだ!おまえは道場を継ぐ事だけを考えていればいいんだ。なのに‥おまえは私の期待を裏切って医者なんぞになって!何が友達との時間だ!一般家庭の温かさだ‥そんな物は何の役にも立たん!」
「立野ッ!いい加減にせんか」
「そんな言い方をするな!立野ッ」
中村先生と理事長先生は父を怒ったが、父は今度は私に言った。
「一美ッ!おまえは自分が何をしたのかわかってるのか?おまえがしたことは立野の家の名前に傷をつけ、私の顔に泥を塗ったようなもんだ。おまえは自分の立場と言うものを全然わかっていない。おまえが私に黙ってY県警を辞めて、目前に迫っていた剣流会にとっては大事な選手権を私の許可なしに出場を取り消した。私が知ったのは選手権の2日前だ!どこを探してもいない。ツテを辿って探し当てた時にはもう日本を出国した後だ。私が後の始末をどんな思いでつけたと思うのだ?」
一美の親父さんは膝の上に置いてある拳を震わせた。また‥一美は頭を震わせていた。一美!このまま黙って泣くだけのか?おまえの言いたい事を今‥言わないと何にも前に進まないんだぞ。俺は一美の手を軽く叩いた。一美は少し頭を振って顔を上げた。
「その事は申し訳ないと思っています。でも‥父さんは私の事をどう思っていたんですか?私は連盟のお飾り人形だったんですか?さと君が言ったように‥私だって普通の女の子として育ちたかったッ!大好きなピアノまで取り上げられてまで、道場の名前を守るために父さんの名誉の為に竹刀を振らなければいけなかったの?わ‥私だって夢があったの!母さんの夢を叶えてあげたかったのに。母さんは病室でずっと言ってた。早く良くなって、お教室再開しなきゃって‥私は母さんのピアノ教室を再開したかったのッ!音楽大学に行って‥母さんのようなピアノの先生になりたかったのよ!」
思いを言葉にした、一美は両手で顔を覆って声を上げて泣いた。
一美の胸の想いを知った親父さんは、また膝の上で拳を震わせていた。
親父さんが中村先生に諭されて、重い口をやっと開いた。子供達がいくら聞いても答えなかった事実がこの時にわかった。重篤の妻の病室にも行かなかった本当の理由は、親父さんの一番下の弟が、株に手を出し莫大な損失を出した。株を初めて2年程は損をすることなく多少の利益はあったそうだが、悪徳な仲介業者の口車に乗せられて、海外会社の株を買ったそうだ。言葉巧みに誘われてその会社の株を買ったのだが、そう上手くはいかないもんだ。買った株は最初の2,3ヶ月は順調に株価が上がったが、4ヶ月目から坂を転がるように株価は下落していった。
弟は損失を出した分を取り返そうとし、自分の資産まで投資したが取り返せなかった。また自宅を抵当に入れて株を買う資金作りをしたが、それも上手く行かなかった。困り果てた弟は、友人や知人に借金を申し込んだが、このご時世だ。誰も弟に融資をしてくれなかった。弟が手を出したのが、民間の金融業者だった。借金だらけの弟に融資してくれるのは、そんなところしかなかった。借入契約書にサインをして融資を受けたが、その金融業者が弟を二重の罠にはめた。また弟に言葉巧みに、融資した金で株を購入させたのだ。もう自分の力では借金を返す事ができない弟は、長兄の親父さんに頭を下げたそうだ。
親父さんは言った。
カッジュこと、一美の父親が姿を現しました。この親子は仲直りができるのでしょうか?クゥと中村先生達も奮闘します。>
「父さん‥お久しぶりです。ご無沙汰致しまして申し訳ございません」
瑞穂ネェが父さんの前で手をついて頭を下げた。父さんの拳が震えていた‥でも振り上げれなかった。両サイドから中村先生と理事長先生に拳を押え込まれていたから。
「瑞穂ッ!一美の態度も気に入らないが、おまえの態度がもっと気にくわん!何が不満で家を出た?おまえには立野家の長女としての自覚はあるのか?」
中村先生は瑞穂ネェにうなづいた。
「今日はこの場で私も言いたい事を言いますよ。私‥ううん。私達子供3人から父さんに聞きたい事があります。答えて頂けますよね?父さん」
「‥‥何を聞きたい?おまえは私の問いに先に答えるべきじゃないか?」
「その答えは後程お答えしますわ。私達の質問に答えてください」
私とさとは瑞穂ネェの態度に驚いていた。父さんの前で、こんな毅然とした態度の瑞穂ネェを見たことがなかった。理事長先生が私に言った‥
「瑞穂ちゃんは腹括って親父さんと話をするつもりだ。君達も腹をくくれ!」
私とさとはお互いの顔を見て、無言で理事長先生に返事をした。また‥クゥも私の目を見てうなづいた。【頑張れ】だ‥
「一美の元上官・ボンバードさんとおっしゃいましたな。何故、この席にあなたがいるのかまずそれを説明していただきたいですな。お見受けしたところ、日本語がお分かりになるようだ。また私の言ってる事は理解してるようだ」
今度はクゥに矛先を向けた父さんだった。私が言いかけたところ、クゥの手で制された。これは【待て】だ。確かにクゥは語学堪能である。世界中を仕事で飛び回っているし、どこの国も日常会話はマスターしている。当然‥今言った父さんの言葉も理解している。
「はい‥日本語も日常会話なら理解できます。確かに、もう一美さんは私の部下ではありません。中村先生の部下ですが」
その時だった‥中村先生が間を割って入った。
「クゥ中佐!もう説明しなくていい。後で一美から話をさせろ!今は先に話し合いを進める事だよ」
中村先生の言葉に、私達親子の話し合いが始まった。
まず、瑞穂ネェが父さんに聞いた。
「私達がお聞きしたい事は3つあります。まず私から聞きます」
瑞穂ネェが思っている事は、私達も思っていた事だ。私達は4歳から厳しく稽古をつけられ、その稽古の為に辛い思いをした。友達とも遊べず、何事も稽古や試合が優先で、学校行事を休まされる事もあった。それは子供心にどれほど傷ついた事か、また一般家庭みたいに両親と出かける事はなかった。また母も持病があり、母とも数える位しか出かけたことがない私達だった。父さんの答えは私達が想像した答えだった。
「それは仕方のない事だ。立野の家に生まれた者の宿命だ。私だっておまえ達と同じ4歳から稽古を始めた。おまえ達も当然じゃないか!4歳から稽古をしてるんだ。おまえ達の実力は群を抜いていただろう?誇らしくなかったのか?」
その時だった。さとがキレた‥
「そんなのちっとも嬉しくなかったよッ!俺達はそんな強さより、俺は友達との時間が欲しかった。家庭の温かさが欲しかったんだ!友達が親と出かけて楽しかったって話を聞く度に、俺は‥」
さとが声を詰まらせた。さとの言いたい事は私にも瑞穂ネェにもよく分かったから。瑞穂ネェがさとの手を軽く握った。それなのに父さんはこう言ったのだ。
「智ッ!おまえは立野の家の長男だ。何を甘い事を言ってるんだ!おまえは道場を継ぐ事だけを考えていればいいんだ。なのに‥おまえは私の期待を裏切って医者なんぞになって!何が友達との時間だ!一般家庭の温かさだ‥そんな物は何の役にも立たん!」
「立野ッ!いい加減にせんか」
「そんな言い方をするな!立野ッ」
中村先生と理事長先生は父を怒ったが、父は今度は私に言った。
「一美ッ!おまえは自分が何をしたのかわかってるのか?おまえがしたことは立野の家の名前に傷をつけ、私の顔に泥を塗ったようなもんだ。おまえは自分の立場と言うものを全然わかっていない。おまえが私に黙ってY県警を辞めて、目前に迫っていた剣流会にとっては大事な選手権を私の許可なしに出場を取り消した。私が知ったのは選手権の2日前だ!どこを探してもいない。ツテを辿って探し当てた時にはもう日本を出国した後だ。私が後の始末をどんな思いでつけたと思うのだ?」
一美の親父さんは膝の上に置いてある拳を震わせた。また‥一美は頭を震わせていた。一美!このまま黙って泣くだけのか?おまえの言いたい事を今‥言わないと何にも前に進まないんだぞ。俺は一美の手を軽く叩いた。一美は少し頭を振って顔を上げた。
「その事は申し訳ないと思っています。でも‥父さんは私の事をどう思っていたんですか?私は連盟のお飾り人形だったんですか?さと君が言ったように‥私だって普通の女の子として育ちたかったッ!大好きなピアノまで取り上げられてまで、道場の名前を守るために父さんの名誉の為に竹刀を振らなければいけなかったの?わ‥私だって夢があったの!母さんの夢を叶えてあげたかったのに。母さんは病室でずっと言ってた。早く良くなって、お教室再開しなきゃって‥私は母さんのピアノ教室を再開したかったのッ!音楽大学に行って‥母さんのようなピアノの先生になりたかったのよ!」
思いを言葉にした、一美は両手で顔を覆って声を上げて泣いた。
一美の胸の想いを知った親父さんは、また膝の上で拳を震わせていた。
親父さんが中村先生に諭されて、重い口をやっと開いた。子供達がいくら聞いても答えなかった事実がこの時にわかった。重篤の妻の病室にも行かなかった本当の理由は、親父さんの一番下の弟が、株に手を出し莫大な損失を出した。株を初めて2年程は損をすることなく多少の利益はあったそうだが、悪徳な仲介業者の口車に乗せられて、海外会社の株を買ったそうだ。言葉巧みに誘われてその会社の株を買ったのだが、そう上手くはいかないもんだ。買った株は最初の2,3ヶ月は順調に株価が上がったが、4ヶ月目から坂を転がるように株価は下落していった。
弟は損失を出した分を取り返そうとし、自分の資産まで投資したが取り返せなかった。また自宅を抵当に入れて株を買う資金作りをしたが、それも上手く行かなかった。困り果てた弟は、友人や知人に借金を申し込んだが、このご時世だ。誰も弟に融資をしてくれなかった。弟が手を出したのが、民間の金融業者だった。借金だらけの弟に融資してくれるのは、そんなところしかなかった。借入契約書にサインをして融資を受けたが、その金融業者が弟を二重の罠にはめた。また弟に言葉巧みに、融資した金で株を購入させたのだ。もう自分の力では借金を返す事ができない弟は、長兄の親父さんに頭を下げたそうだ。
親父さんは言った。
作品名:HAPPY BLUE SKY カッジュ新部署へ 2 作家名:楓 美風