HAPPY BLUE SKY カッジュの卒業
「まぁよく持ったな。ここのフロアーまで俺は歩けないと思っていたよ。だからクゥ中佐が俺を見送りに付けたんだぜ。彼氏のクゥさんにメールしとこうか?剣流会のソファでノビてるって!彼女のカッジュちゃんが」
その言葉に私の顔はますます赤くなったのを見て、ミラド先生は笑いながら言った。
「あ‥ごめん。ますます具合悪くなっちまうな。それこそ、後でクゥに俺はヤキ入られるわん。ごめんねぇ‥カッジュ」先生は笑いながら私の頭を叩いた。
「せ‥先生ッ!それこそ言いつけますよ。さとッ!私の携帯取って」
私は衝立の向こうにいる、さとを呼んだ。
それからクゥ中佐が剣流会に私の様子を見に来た。
「あれ‥さとは?」
「行っちゃった。ミラド先生が腕掴んでお隣の陸軍病院にラチした」
中村先生は頭をかきながら‥クゥ中佐に言った。
「すまん‥私が止める間もなく。さとがカッジュの携帯電話を持って衝立の後ろから出て来たんだ。カッジュの弟だと紹介して、さとがインターンだとわかったら」
「クゥ中佐ぁ‥ミラド先生・スマイルだよ。ミラド先生はさとがまだ病院を決めてないって言ったら、有無も言わさずにさとの手を引っ張って行っちゃったの」
「あの男ぉ!!どーしていつもいつも!」クゥ中佐は手をワナらせた。
後日‥さとは陸軍病院・外科医見習いとして陸軍病院に採用が決まった。本人もビックリである。もぉ‥ミラド先生ったら速攻すぎるよ。あの先生は、ターゲットが決まったら、ターゲットを落とすまで諦めないのだ。3年前にも、スポーツドクターとして勉強したいからって、私を実験台にしたのだ。痛いのは嫌だし、怖がりの私は最初は断っていたが、ミラド先生のターゲット狙いに落ちてしまったのだ。マブダチのクゥさんもこのターゲット狙いをされたらダメらしい。
クゥ中佐はため息をついたが、こう言った。
「まぁ‥結果的に良かったんじゃないのか?さと‥まだ何も動いてなかったんだろう?ミラドの下で働いたら、いい外科医になるよ。ヤツは口は悪い・手は早いけど、いい外科医だよ。さともそこで修業すれば良い外科医になれるよ」
私はクゥ中佐に手を貸してもらって、ソファから起き上がった。
「もう大丈夫‥歩いて家に帰れるから」
「本当に大丈夫か?あと1時間待ってくれたら、ランチ休憩だから送って行くぞ」
「‥‥そんなことしたら。ランチ休憩から帰って来たら、部で糾弾されるよ」
「‥‥されるな。もうカッジュが部に居ないから、容赦してくれないな。アーノルド少佐がカッジュが行った後に、差し入れのシュークリームを食べながら言ったんだ。【これで遠慮しなくていいね。大っぴらにカラかえるよ】ってな!片割れも顔を見かけたら、カラかってやるんだ。彼女の一美ちゃん」って」
そのアーノルド少佐の言葉に、私は両手で顔を覆ってしまった。中村先生はクゥ中佐の顔を見て言った。
「そんな怖いの?アーノルド少佐は部の男連中の中では1番優しそうに見えるのに」
「‥怖いってもんじゃないですよ。アイツもミラドと同類です。俺だってアイツに目を付けられたら、逃げますよ。な‥元部下!」
私はクゥ中佐の言葉に、同意の意味で何度もうなづいた。
退庁する時に、私はまた正面玄関から出て行き‥玄関の前に立った。
「ありがとうございました‥諜報班員としての職務は終わりましたが、また来週から今度は、剣流会スタッフとして登庁します。よろしくお願いします」
私は深く頭を下げた。こうして、4年間の諜報員としての職務を終えた。
作品名:HAPPY BLUE SKY カッジュの卒業 作家名:楓 美風