HAPPY BLUE SKY カッジュの旅立ち編 4
私はファイン支部の独身寮で3年半暮らした。荷物もそれなりにあったが、新生活だから家具や家電を買い揃えた。寮で使っていた物は部室に持って来た。先輩達は電子レンジに電気ポットを喜んでくれた。新しく買った家電で調理をしている時に、インターホンパネルが明るくなった。
「カッジュ!俺だ」
インターホン越しに声が聞こえた。私はオートロックのボタン解除を押した。
「今日はクゥの好きなビーンズ一杯のシチューだよ」
「うん。もう昨日買った圧力鍋使ってるのか?」
「うん。便利だねぇ!これから毎日自炊するよ。新しい家電さん達使ってね。クゥもご飯食べに来て。引っ越しからコキ使っちゃったから」
「うん。あぁ‥これもな」クゥはまた私に紙袋を手渡した。
私が作ったシチューを3杯お代わりして、オーブンで焼いたバターロールも4個食べたクゥは、満腹でラグマットの上で寝転んでいた。
「あぁ‥寝ちゃったか」
小一時間程してから、目をこすりながら上体を起こしたクゥだった。
「すごく気持ち良さそうに眠ってたよ。約1年振りの登庁にお疲れだったのでは?」
「そうだな!カッジュで5ヶ月だ。俺は先に入国していたから1年近くだ。エージェントになってから初めてかもしれん。11ヶ月の海外公務」
マグカップに入れたコーヒーをクゥに手渡した。
「あぁ‥美味い。今日‥部室のヤツらはカッジュの入れたコーヒーを堪能してたな。ゲイルはカッジュの入れた紅茶にハイテンションになってさ」
「あれだけ喜んでくれるなんてね。でもすごく嬉しかった‥やっぱり部は良いですね。帰って来たらホォーッとする。自分の居場所はここなんだって‥思いました。でも寂しいな。来月で私は部を退室するから」
俺はカッジュの肩を抱き寄せた。
「俺達も寂しいけどさ。でも‥頑張れ!君なら出来るさ‥3年半!俺と第1TOPが教え込んだ物は、きっと新しい場所でも生かせるさ。君はそれができる人間だ‥俺はそう思っている。ヘコんだらいつでも言え。俺の胸貸してやるから」
「‥‥はい。中佐!カッジュ下士官‥新しい部署でも頑張ります。でもヘコんだら、この胸いつでも貸してくださいね。もう‥この胸の中はカッジュのモノですよね?」
「うん。君だけのモノだ」
中佐こと‥クゥは私を腕の中にしっかり抱きしめてくれた。
【カッジュの旅立ち編 2】完結です。
次作は、カッジュが新部署に異動になるまでの物語です。その物語の中で、カッジュに不審な電話がかかってきます。その不審な電話とは‥一体何なのでしょう?
作品名:HAPPY BLUE SKY カッジュの旅立ち編 4 作家名:楓 美風