HAPPY BLUE SKY 後編5-3
復活した?クラウス・デ・ウィル・ボンバード少佐!
私がC国に入国して2ヶ月が経った。私が入国した時点で、滞っていた少佐の任務が進展した。また少佐が半年間コツコツと捲いていた【種】が芽を出し始めていた。私の役目は、その種を実らせること。また、ドーリーの妻としての【情報収集】をする事だ。私達が滞在している町内は小さな町だ。同じカンパニーのスタッフも町内に住んでいた。もちろん、少佐がターゲットとしている人物も町内に住んでいた。この2ヶ月で、ドーリーの妻として町内の奥さん達や、地元ショップのマスター達から色々と情報を得ていた私だ。今日も地元ショップで、食料等の買い物をしながら【情報収集】をしている私だった。
「ミサぁ!今日はディナーは何するの?」
同じマンションの奥さんだ。この人もドーリーと同じカンパニーで働いていた。また彼女のパートナーもカンパニーの工場で働いている。私は食材を手に取りながら、
「今日はチキンが安いし、グリルで焼いちゃおうかな。中に一杯野菜入れて」
「それ美味しそう!どうやってするの?今度良かったらレシピ教えてね」
「うん。いいよ‥また私にもメグのお得意料理教えてよ」
「ラジャぁ‥ね!ミサ‥知ってる?」
彼女は私の手を軽く叩いて右方向に指をさした。
メグとマンションに帰る途中で、ドーリー(少佐)とマーク(メグのパートナー)に逢った。マークが私達2人を見つけて笑顔で手を振る。またドーリーも口元スマイルだけして手を振った。マンションまで一緒に帰った‥
「おい!ドーリー・ミサ!今度夫婦二組で、XXX州にできたテーマパーク行かないか?結構な人気でさ、うちの社長が投資してるんだって。社員は優待してくれるって言うんだよぉ」またメグもこの事を知っていたようで、
「行きましょう!ミサの好きなベアールーのアイテムショップが一杯あるそうよ」
二人は笑顔で私達を誘った。
マークご夫妻に手を振り玄関のドアを閉めた。ドアを閉めてから、ドーリーこと少佐は注意深く室内に変化がないか調査する。この頃‥盗聴されている傾向があるのだ。気づいたのは私だった。今月に入ってやたら、セールスマンやセールスレディが我が家のインターホンを押す。ドーリーに1人の時はドアを開けてはいけないと言われている私は、
「後で見ますから、ポストに入れて置いて」
インターホン越しに言って、ドアを開けないようにしている。
支部で研修を受けながら、ドーリーの妻としても【諜報活動】をしている私は多忙だ。また1日家に居るわけではない。朝、支部に出勤してから夕方まで帰宅しない事もあった。少佐が室内に取り付けた超小型カメラで2時間置きに室内の様子を確認はしているが、管理人室・ダストコーナー(ゴミ捨て場)まで監視はできなかった。5日前に帰宅時に管理人から呼び止められた。留守の間に我が家に来訪者がありパンフレットとキッドを預かったそうだ。送り主を見ると見覚えのないカンパニーだ。
「こんなカンパニー知らないわ。受け取ったらドーリーに怒られちゃう」
「そうかい。じゃ‥こちらで捨てておこうか?」管理人は言う。
「あ‥でも!一度聞いてからじゃないと。ありがとうございます。すみません‥両手塞がってるので、ここに入れてもえらます?」
私はショルダーバックに目線を移し、管理人はキッドをバックに入れてくれた。
室内に入って、オペ用のグローブをつけて先程のパンフレット・キッドを注意深く見て行った。ページをめくっている時に何か指に違和感を感じた私だった。
「‥‥ここだけヘンだわ。ドーリーに見てもらおう」
私はテーブルの上にキッドとパンフレットを置いたままにして、ドーリーの帰宅を待った。
キッチンで調理をしている私をドーリーが呼んだ。
「ミサの推理で正解だ。このキッドの中に、超小型のマイクが入っていた。パンフレットの違和感はこれだ」
テーブルの上に取り出された、超小型マイクと変色したシールを私は覗き込んだ。覗き込んだ私の顔に、ドーリーは自分の顔をつけながら言った。
「多いな‥これで3件目だ。俺達の身元がバレたか?」
「かな?あぁ‥今日ねメグが面白い事言ってたよ。いつも行くスーパーに、最近新しいスタッフが何人も入ったそうよ。また古参のスタッフが続けて解雇になったんだって」
「ほぉ‥あのスーパーはこの町内では古いだろう。経営者が変わったのか?」
「らしいよ‥何でも社長の甥っ子が仕切ってるし、社長はどこに行ったか行方不明で」
「その甥っ子ヤバイんじゃないの?」
「メグも言ってた。何でも札付きの悪ガキで大人になってからもよく問題を起こしているんだって。でも‥最近心を入れ替えたのか、超マジメになってるって。おかしくない?」
「あり得るな‥わかった。俺の方でも捜索してみるよ。あ‥キッドを元の場所に戻してやろう。そして、新婚さん独特の会話聞かせてやろう!成功したって思わせてやろう」
「うん。じゃ‥キッド入れたら呼んでね。調理の続きするから」
「ラジャぁ!」少佐は早速作業にかかった。
作品名:HAPPY BLUE SKY 後編5-3 作家名:楓 美風