小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

HAPPY BLUE SKY 後編5

INDEX|3ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

偽夫婦の二人



カッジュの作った料理は美味かった。彼女はファイン支部に居る時によく宿直組に料理を作ってくれた。自分も食べるからと言って、何回も俺はカッジュの料理を口にした。またカッジュは、日本に居た時も自分で作って食べていたそうだ。母親が亡くなってから、姉と弟で交代で料理を作っていた。ナイフの扱いも鳴れていたし、調理も手早かった。

「美味かった‥カッジュは料理上手なんだな。レパートリーも広いしさ」
「ありがとうございます。うちは母が入退院の繰り返しで、姉と弟で交代で料理してたんです。最初はよく失敗しました。亡くなった母は美味しいって言ってくれましたけど」
俺はクロスで皿を拭きながら、カッジュの話を聞いていた。

「カッジュは15歳の時にお母さん亡くしてるんだったな。それからか‥どうりで料理が上手なはずだ。俺は全然そういう事をしないで大きくなったからな。あぁ‥俺は君に言ってなかったな。俺も母親いないんだ‥7歳の時に病死したんだ」
「そうだったんですか‥お父様は確か」
「うん。同じNATOC軍だ。親父は海軍で年中巡視船に乗っててな。家に帰って来るのは1年に2回位かね。もう定年だから、さすがに船は降りたけどな」
「うちとよく似てますね。うちも連盟を継ぐまでは父は警察官でした。事件だ‥緊急の呼び出しだで、家に落ち着いていませんでしたよ」
「親父さんも警察官か?」
「はい。父は機動隊員でした。私が7歳の時に退職しましたけど」
「道場を継ぐためにか?」
「はい‥でももう私には関係ありません。立野の家と道場とは無縁になりましたから」
カッジュは拭いた皿を食器棚に戻し始めた。

翌朝‥コーヒーのドリップした匂いと、パンの焼ける匂いで目が覚めた。俺はベッドの中で鼻を動かした。
「あぁ‥いい匂いだ。カッジュが朝飯作ってくれてるんだな。うん‥起きるか」
ベッドから上体を起こした俺だった。

「おはようございます。トーストとスクランブルエッグとサラダでいいですか?コーヒー豆は2番目に好きな豆にしました」
キッチンの中からカッジュの声がした。俺はキッチンの中に入り、カッジュの横に立った。
「おはよう。それで結構です‥うん。スクランブルエッグも横のベーコンも美味そうだ。食欲がわくよ」
「それはいいことです。あ‥ヨーグルトも食べますか?少佐は乳製品嫌いなの知ってますけど、時々食べた方がいいですよ。バランスよく食べないとダメですよ!」
「はいはい‥カッジュさん。イエ‥ミサぁ。一応夫婦なんだから、その言葉遣いダメだ‥他人行儀に聞こえるぞ。それにドーリーさんって言うのはマズイ。ドーリーでいい」
「はい‥」
「返事だけか?ミサ」ちょっと低い声を出してやった。
「ドーリー‥」
少し顔を赤くして俺の偽ネームを言ったカッジュだった。俺はフライパンの中のスクランブルエッグをスプーンに取り、口に入れた。

「うん、美味い。ミサも食べろよ」
カッジュことミサの口にも、スクランブルエッグを入れてやった。
「うん‥美味しいね。ドーリー」
ちょっと赤くなった顔で笑ったミサだった。

初出社するまで、俺とカッジュは会話スタイルも練習した。俺達はにわか夫婦だ‥どこでボロが出るかわからない。雑誌やテレビなどで習得できる物はしなければ。またアクションも練習した。潜り込むカンパニーには、俺は2ヶ月前に結婚した事になっている。2ヶ月と言えば新婚だ。新婚夫婦ならではのアクションや会話スタイルも表面に出さなければいけない。また、シャイなカッジュに新妻の会話・アクションができるだろうか?いや‥してもらわないと困る。カッジュも任務だから努力して覚えているが。今一つギコちない。

「カッジュ‥何回言わせるんだ?新妻だよ‥カタイよ!表情もしぐさも」
「申し訳‥イエ‥ごめんなさい。ドーリー」頭をかくカッジュだ。
「ハァ‥見よう見真似じゃいけないんだな。カッジュ見てよくわかったよ!仕方ないな。俺もさ、彼氏としての会話とアクションは何とかなるよ。夫役は初めてだからさ」
カッジュが俺に疑いの目を向けた。
「ホントだって!俺が他のエージェントの女とこういう事すると思ってるのか?俺のニックネームを知っててそんな顔するんだ。カッジュは」
「ごめんなさい」
「謝罪だけか?そうだな‥謝罪の代わりに」
少佐は私の腕を引っ張った。
作品名:HAPPY BLUE SKY 後編5 作家名:楓 美風