HAPPY BLUE SKY 後編
それから半月後‥
私はファイン支部に帰って来た。空港では、アーノルド主任とツィッター主査とヨル先輩が迎えに来てくれていた。今から、部の先輩達で祝賀会をしてくれると言うのだ。もう他の先輩達は、部室でパーティの準備をしているそうだ。大佐・中佐・部長も部長秘書さんも出席してくれる。
「カッジュ!世界選手権・個人戦1位おめでとう!乾杯」
部室内に歓声と拍手が鳴り響いて、シャンパンを飲み干した。そう‥私は2日前に行われた、欧米世界選手権の個人競技で1位を獲得できたのだ。決勝の相手は日本のポリス時代に負けた選手だったので、得意技で2本連取できた時はすごく嬉しかった。ポリス時代のカリを返したようなものだ。試合が終わった後、チームの仲間達に胴上げをされ、それでまた喜びに浸った私だった。部長が私のグラスにシャンパンを注いでくれた。
「よくやった!さすがカッジュだ。テレビで見ていて、優勝決定の瞬間は私はデスクで万歳三唱したぞ。大佐もだ」
また私の頭をなでてくれた部長だった。大佐と中佐にも頭をなでられ、スィーツ食べ放題に連れて行ってくれると言ってくれた。少佐がいたら、横で呆れた顔をしているだろう。中佐が私の耳にイヤホンをつけさせた。私の顔は‥見る見るほころんでいった。寮に帰ってから、中佐から頂いたテープを繰り返し聞いた私だ。そのテープとは‥‥
私の耳に聴こえたのは、半年ぶりに聞く少佐の声だった。映像はなかったが、声だけでも嬉しかった。あの低く良く響く声で私の名前を呼んでくれたのだ。
「カッジュぅ!世界選手権1位おめでとう。さすがカッジュだな!よくやった‥今度逢った時には、スィーツ食べ放題2回連れて行ってやるよ。選手権が終わったら半年休みだってな。その間にしっかり昇格試験の勉強しろよ!俺がいねぇからってサボるなよ。あぁ‥土産ありがとうな。連続でもらってさ!今度それも返すからよ。楽しみにしとけ」
たった3分間の声だったが、3分でもいいのだ。少佐の声がテープを通して聴けたのだから。私は中佐がダビングしてくれたのをウォークマンに入れて、少佐の声が聴きたくなったら、繰り返し聴いた。これで随分と寂しさが紛れたものだ。
私が部に帰ってから数日後の事だ。C国に在中しているビリー副主任から緊急連絡が入った。一時、部室は騒然とした。C国で何があったのだろうか?アーノルド主任が電話に出て、ビリー副主任と話をしている。電話が終わったようだ‥部員全員がアーノルド主任の言葉を待っている。
「落ち着いて聞いてくれ。ツィンダーが負傷した。大腿骨骨折で先程手術が終わったそうだ。研修中の事故らしい!この前も話したと思うが、少佐達がC国で長期滞在だ。交代要員をすぐに送り込む事になった。今から名前を呼ぶ!呼ばれた者は隣の部屋に来い」
アーノルド主任の声に、部員全員が緊張した表情になった、
【2】に続きます。
作品名:HAPPY BLUE SKY 後編 作家名:楓 美風