HAPPY BLUE SKY 中編
心の変化【1】
部室では、部員全員がテレビの前に集結していた。また俺もTOP4人もミラドもテレビの前にいた。テレビ画面にはカッジュが映し出されていた。ヘッドコーチの言葉に軽くうなづいてるカッジュだ。カッジュはコートの前面に座り、膝の上に手を置いて目を閉じた。
部員達が口々に言った。
「試合前の精神統一なんだぜ!アレ」
「カッジュが言ってた。【MOKUSOU】って。心の中を空っぽにするんだ」
「普段さ、ガキみたいだけど。あの姿見たら‥別人かと思うよ」
俺もTOPもミラドも部員の言ってる事にうなづいた。今、テレビ画面の中にいるカッジュは、俺達が知っているカッジュとはまた違うカッジュだから。カッジュがこれから競技するスポーツは、日本の武道である【KENDOU(剣道)】だ。欧米のスポーツに例えたら【フェンシング】みたいなものかな?俺は部下達に教えてもらうまで、もう一つこの剣道のルールがわからなかった。カッジュは捕り物の時は【合気道】やポリス時代に習得した【逮捕術】を使っていたが。カッジュの足の運びを見ていたら、その剣道で使う【足技】をよく使っているそうだ。これはツィンダーに教えてもらったのだ。ツィンダーは元々日本の武道に興味があったので、カッジュが入隊してから色々とカッジュから【技】を教えてもらったようだ。そのツィンダーが得意そうに解説した。
「今回は8月に行われた欧米大会の優勝者が集まってるんですよ。グレードの高い試合なんですよ。カッジュ選手はAエリアで、あぁこの選手との試合が注目されてるんです」
テレビ画面に出場選手の名前がテロップされた。また、選手の顔とプロフィールが映し出された。その選手は‥女性ながらも180cm75キロの重量級だった。ミラドとTOP4人が俺の横で深いため息をついた。
「ガキんちょ・カッジュは大丈夫なのか?あのガキは‥160cm47キロだぜ」
「あぁ‥あのプロフィール間違ってる!カッジュは46キロだ」
「アイツ!部室出て行く時にメチャ食ってたよな」
「前より減ってたらコーチに怒られるからって」
「カッジュはスィーツとパンは限度なく食べますけど。他はあまり食べないもんな」
「ウェイト・体格負けすんなよ。カッジュ」
その言葉に、俺と他の部員達は【うんうん】とうなづいた。
試合が始まった‥
ミラドとTOP4人が言った言葉とは反対に、カッジュは互角に相手と闘っていた。ルールのわかるツィンダー・ヨル・ハインツの声が部室内に響く。
「行け!カッジュそこだ!」
「カッジュ!頑張れ!やっちまぇ!得意技出せ」
「カッジュ!追い込め追い込め!」
他の部員達も、ルールブックを見ながらカッジュを応援している。
対戦相手は、カッジュの事を舐めていたのだろう。自分より背が低くウェイトも少ないカッジュを力で押さえこもうとしたが、カッジュの足は【技】を生かし相手の攻撃をかわし、また相手に猛攻撃をかける。テレビに映ったヘッド・コーチが手を上に突き上げて喜んでいる。対戦相手の選手はコーナーに追い込まれた。そして‥カッジュの足が動いた!
部員全員と俺とミラドは部室の中で【万歳三唱】をした。
「バンザイ!バンザイ!カッジュ選手!優勝おめでとう」
そうだ‥カッジュが勝ったのだ。テレビ放映されたのは準決勝からだ。準決勝で重量級の選手に勝ったカッジュは、決勝戦の相手から得意の【技】を使って2本連取した。カッジュが【技】を決めた瞬間には、観客席から拍手が鳴り響いた。表彰式では、カッジュの手に【トロフィ】が手渡されて、また審判長の言葉に笑顔を見せたカッジュだった。またその笑顔がとても嬉しそうだった。横に居たアナウンサーがカッジュにマイクを向けて言った。
「おめでとうございます。今どんなお気持ちですか?一番にこの優勝を誰に伝えたいですか?よかったら聞かせて下さい」カッジュは軽くうなづいて‥
「ありがとうございます!すごく嬉しいです。復帰して初めての公式試合で優勝できて。一番に伝えたい相手はですね‥」少し赤くなってカッジュはインタビューに答えた。
作品名:HAPPY BLUE SKY 中編 作家名:楓 美風