HAPPY BLUE SKY 中編
カッジュの転機【2】
訓練校時代にカッジュに俺に言った事があった。カッジュは4歳の時から厳しく育てられた。一般家庭とは違う異色家庭だと俺に言った。一般家庭の様に、家族で出かける事や食事に行くこともなかった。またカッジュは15歳の時に母親を病気で亡くしていた。母親の臨終の時も父親はそばにいなかったそうだ。【連盟】の仕事で全国各地を飛び回っていたそうだ。カッジュには姉・弟がいた。母親が逝くのを3人で見守ったそうだ。カッジュは俺に言った。
「‥‥私は父親を恨んでいます。母が亡くなるまで、心のどこかで父は必ず病室に来てくれるはずだって思っていました。でもあの人は来なかった‥自分の妻が逝こうとしているのに!あんなに冷たい人だとは思わなかった。それにもう私は‥この国でずっと生きていくって決めたから。だから私なりにけじめをつけてきます」
その言葉の通りに、カッジュは訓練校の卒業式が終わり初登庁するまでの2週間の休暇の間に1人で日本に帰国した。そして、帰国した時に日本の土産を持って支部に挨拶に来たカッジュだった。日本の焼き菓子を5箱も買って、また部員と一緒にその焼き菓子を頬張って笑っていたカッジュだったが。ゲイルが後で俺に言った‥
「少佐ぁ‥カッジュの右の頬はわかりましたか?」
「右の頬がどうかしたのか?」
「カッジュ‥普段メイクしないでしょう。あれは隠す為のメイクですわ」
ゲイルは自分の右の頬を指で押えながら言った。その言葉に俺とTOPはお互いの顔を見合わせた。その日の夕方に仕事が終わってから、カッジュを表通りのパブに呼び出した。
「右の頬はどうしたんだ?ゲイルが気がついた‥日本で何かあったのか?カッジュ」
俺はカッジュの手を引っ張り、陸軍病院の外科医局に行った。この外科医局に俺の同期でもある軍医のミラド・ウィリアムズがいた。また俺が女を連れて来たものだから、ミラドは初っ端から俺とカッジュを冷やかした。
「おぉ‥明日は大雪かぁ?おまえが女連れて病院に来るなんてさ。あら‥女かと思えば!ガキんちょ・カッジュじゃん」俺は手をワナらせながら‥
「うっせぇ!余計なお世話だよ。誰が大雪だって?」またカッジュもミラドを睨んだ。
「ガキんちょ・カッジュで悪うございましたね!ッタ」
カッジュは右の頬を押えて顔をしかめた。
作品名:HAPPY BLUE SKY 中編 作家名:楓 美風