HAPPY BLUE SKY 中編
心の変化【3】
車の中で、ぐっすり眠っているカッジュを起こすのは可哀想だが。俺はカッジュの頭を軽く指で小突いた。
「カッジュぅ!寮に着いたぜ。起きろ」
カッジュはよほど疲れていたのだろう。指の小突きでは起きなかった‥M国で1ヶ月の遠征に体力・気力共に疲労していたのだろう。でも起こさないとな!
「カッジュぅ!起きな‥寮に着いたぜ」
俺はカッジュの肩を軽く掴んで揺さぶった。目を閉じたままのカッジュは、俺の腕をピロと間違えてるのか、無意識で俺の腕に軽く抱きついた。
「‥‥ん。まだ寝るぅ」とつぶやき、また眠りに入ろうとしていた。
「何言ってんだよ。寝るんならベッドに入って寝ろ!ほら起きろよ」
俺はカッジュの頬を指で突っついた。そしてカッジュの目が開いた‥
俺は自宅に帰ってから、ソファの上で自分の手を見つめていた。車の中で目を覚ましたカッジュは、慌ててシートから起き上がろうとした。慌てたカッジュは、バランスを崩し俺の胸に顔からダイブしてしまった。その時に鼻を俺の胸にぶつけてしまい、痛さに声を上げたカッジュだった。ぶつけた個所が悪かったのか、カッジュは鼻血を出してしまった。俺のワイシャツにも鼻血が付いてしまい、カッジュは自分の鼻血よりも、俺のワイシャツについた血を自分のタオルで一生懸命に拭いた。
「洗えばいい事だ。ワイシャツよりもお前の鼻血を止血するのが先だ。こっち向け」
俺はダッシュボードの中のティッシュを取り出し、カッジュの鼻に当てた。幸いにも鼻血はすぐに止まったカッジュだ。俺はカッジュの顎に軽く両手を添えて出血が完全に止まっているか確かめる為に、カッジュの顔を覗き込んだ。
「うん‥止まってる。あぁ‥今日は長風呂するなよ!シャワーだけにしとけ」
「は‥はい。ありがとうございました」
この時のカッジュの顔は、少し赤かったかもしれない。俺はカッジュが寮のドアを入るまで見送った。カッジュもドアを入る時に俺にまた頭を下げた。何回‥頭を下げるんだ。また鼻血が出るぞ!カッジュ‥
俺は自分の手を見つめながらつぶやいた。
「アイツ‥モンスターパワーのクセしてさ。意外とキャシャなんだな‥肩細かったな。また顔も思ったより小顔だった。いつも見てるのに、触れて分かることがあるんだな」
俺は無意識か‥頭を掻きながらまたつぶやいた。
「色白かったな。睫毛も長いじゃないか。入隊した頃は、メイクなんて殆どしてなかったのに、薄くだけどメイクしてたな。そうしてれば年齢相応に見えるんだ。カッジュは」
それからだ‥俺は自分の心の変化に気づいたのは。
作品名:HAPPY BLUE SKY 中編 作家名:楓 美風