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HAPPY BLUE SKY

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少佐の思惑



私はこの2週間近くストレスも溜まっていて、手加減しないで男を床に投げ飛ばしてしまった。男は完全に失神していた。少佐がつけていたイヤホンマイクに報告が入った。その後もまだ捕獲しなければいけない男が数名いた。

「そうか!実習生が今1匹チンピラ投げ飛ばした。加勢に行かせる」
少佐は私を見て指で14時の方向を指した。
「行け!部員達を手伝って来い。手加減しなくていい!ストレス溜まってるだろうが。そこで発散させて来い。訓練生」
少佐の周りにいたTOP部下の1人が私にうなづいた。
私は少佐に敬礼して、TOP部下について行った。

捕獲が終わって部室に帰った時の事だった。今までなら私が声を張り上げても、見向きもしなかった部員が私の姿を見て「お疲れ!」と声をかけてくれたのだ。私は声をかけられたことに驚いて、返事が遅れてしまった。横にいたアーノルド指導教育係が私の腕を軽く叩いた。

「何カタまってんだよ‥おまえ!ほら‥部室に帰って来た時のご挨拶しな」
「申し訳ありません!Kazumi Tateno訓練生!只今帰室致しました」
靴の踵を床で軽く鳴らし敬礼をした私だった。

部室の一番奥のデスクからまた声が聞こえた。部室の一番奥のデスクは少佐のデスクだ。
「訓練生ッ!デスクまで来い」低いが良く響く声で私を呼んだ。
少佐のデスクまで小走り状態で行き、またデスクの前で敬礼をした私だ。
「お呼びでしょうか!少佐っ」
「用があるから呼んだ!お前の耳は機能しとらんのか!」
私は顔を引きつらせた。(ヒエェ‥怒らせちゃった。どーしよ)
アーノルド指導教育係が私の腕を軽く叩いた。【謝れ】だな‥
「申し訳ございません!」頭を下げた私だった。

少佐はデスクの上に両肘をついて、私の顔を見た。さっきから何も言わない‥私は少佐の視線を外すわけにはいかない。私も少佐の顔を見ていた。
「ポリス時代だけじゃないな。見せてもらった護身術は一介の訓練生レベルじゃないな。経歴・職歴ファイルを見ただけじゃわからんからな。実戦で君のレベルを見せてもらった。フォンの熊親父が俺に言ったんだ。女だから舐めてかかるなと」

「フォンの熊親父?フォン部長先生の事でありますか?」
私は聞き直したぐらい、少佐の言葉にビックリしていた。アーノルド指導教育係は笑いながら私に言った。
「訓練生も言ってるだろ?フォンの狸親父にヒツジのボング教官に」
「フォンの狸親父は俺がつけてやった。あの親父‥嘘ばっかりつくからな」
少佐はタバコをふかしながら、「クック」と声を出して笑った。初めて見た‥少佐が笑っているところ。また驚いた顔をしていた私に少佐は言った。

「一応使えるな。明日から【捕り物】に連れて行ってやる。明日から訓練校のジャージ着ろ。いつでも飛び出せるようにスニーカー履いておけ。俺がおまえの力加減決めてやる。レベル方式で!わかったか!カッジュ訓練生」

少佐は私が帰ってから、少佐の右腕とも言われる2名・また少佐の左腕とも言われる2名をデスクに呼び寄せて言った。
「あのガキ‥見た目はハイスクールでも通用するけど。おまえらも見ただろう」
TOP4名(右腕・左腕)がうなづいた。そのTOPの中の1名がアーノルド指導教育係だ。またビリー副指導教育係・ディック主査・ツィッター主査もTOPメンバーだった。4人のTOPは口々に言った。

「ビックリしましたよ!最初の男はアレは日本の柔道ですね。背負い投げ」
「またキレイに決まりましたね。あの小柄な訓練生がタッパのあるチンピラ男を投げ飛ばした時には。俺は無線機持ってカタまりました」
「俺も!でも‥アイツ投げ飛ばした後スッキリした顔してましたね。ックック‥そんだけストレス溜めてたのか。カッジュ訓練生」
「少佐がカッジュ訓練生って呼んだ時の顔は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔してました」

少佐はまたタバコに火を点けながら言った。
「あぁ‥アイツさ!ビックリしたら目が一段と大きくなるな。おもしれぇけど‥その癖は治さんとな。1番目にノシた男と2番目にノシた男‥両方とも失神させやがって。」
「3番目にノシた男は肘鉄ですね。骨が折れる音がしましたよ‥聞こえたもんな」
「うん。後で軍医が診察したら3本肋骨にヒビが入っていたそうです」

少佐はタバコを灰皿で揉み消して言った。
「使うだけ使ってやろうぜ。カッジュ訓練生!ラクさせてやれ‥うちの部員達に」
TOP4名はうなづいた。私は少佐とTOP4名がこんな話をしているとは思っていなかった。次の日から私は【捕り物】で少佐にコキ使われるのだった。
作品名:HAPPY BLUE SKY 作家名:楓 美風