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HAPPY BLUE SKY

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配属先の決定 その2


もう後10日で実習が終わる。相変わらず少佐からは【配属先】についての話はないのだ。また部室の最下っ端のツィンダー・ヨル先輩は私に自分達が実習生の時の事を話してくれた。
「俺も結構ギリギリだったぜ。焦った焦った」
「実習先のボスによっては、気に入ったら【キープ】ってことで。早い段階から訓練校の教官に言ってるそうだ。うちに欲しいって」
「そうなんですか‥私はまだ何も決まってなくて」
ツィンダー先輩は私の頭をファイルで軽く叩きながら言った。
「そういうヤツもいるって。その内決まるさ」
「うん。あぁ‥ハインツ先輩のベルギー土産食おう。1人3個までの生チョコ」
私はその言葉を聞いて思わず【ツバ】を飲みこんだ。

俺とアーノルド指導教育係・ビリー副指導教育係は外出先から帰って来た。またミニ・キッチンでツィンダーとヨルの痛がる声が聞こえた。聞こえてすぐにミニ・キッチンのカーテンが開いた。カーテンの中から出てきたカッジュ訓練生は、手の中の物を見て口元だけ笑った。そして手の中にあった物を口に入れて食べた。
「おいちぃ‥やっぱチョコは生チョコだよね。あぁ‥おいしいかったぁ」
カッジュ訓練生のその声に、カーテンの奥からツィンダーとヨルの怒声が聞こえた。あのガキはまた最下っ端2名を【力】で押え込んだな。
「またやったのか?ガキんちょ・カッジュ」カッジュの襟首を掴んでやった。
「お‥お帰りなさい。少佐!」俺の顔を見て顔を引きつらせたカッジュだった。

カッジュ訓練生が実習に来てから2ヶ月半が経った。俺の気のせいかもしれんが、最近部室の雰囲気が変わった。デスクワーカーのトムが自分の仕事の合間で部室の掃除などをしていたがトムも所詮男だ。細かい所に手が行き届いていない所がある。言えばキリがないが。数日前に俺はミニ・キッチンに入った。いつもならトムがコーヒーを入れてくるのだが、トムは支部の連絡会議に出席していて不在だった。

俺はカップボードの中を見て首を傾げた。今まで男28人世帯だったからな。お世辞にも綺麗な部室とは言えん。ましてやキッチンは他の部署の人間には見せられるモノじゃなかった。使った後は洗ってはいるみたいだが。綺麗に汚れが落ちていないカップ達もありに、シミになってしまったクロス達が無造作に突っ込まれていた。ところだが‥
「カップが綺麗になってるじゃないか!クロスも洗ってる」
俺が驚いたのはカップボードの中には、光り輝いたカップ達に漂白したのか真っ白なクロスが畳まれてバスケットに入っていたからだ。こんな事ができる人間は‥うちの部員にいるとは思えん。もしや‥アイツか?

また俺の片腕的存在のTOP4人達も俺と同じ事を言っていた。
「最近‥部室の空気良くなりましたよね。前はタバコの煙が充満していたのに」
「床も綺麗だ‥前はタバコの灰やゴミが落ちてたのにな。今はないぞ」
「キッチンが一番変わったかも。綺麗だもん」
「キッチンのシンクも前は水垢がついてたのに。今はない」
「どうやら‥【カッジュ】がしたのじゃないか」
俺が言うと、またTOP4人も俺と同じ事を思っていたみたいでうなづいた。

俺はその夜は徹夜だった。他国のエージェントからの連絡を待っていたのだが連絡がなかった。このままでは始業チャイムの前に寝てしまいそうだった。ここ2日殆ど睡眠を取っていなかった。TOP4人は俺の命令で他国に赴任している‥デスクワーカーのトムも同行して部室には数名の部下しかいなかった。コイツらに頼んでもいいのだが、とんでもなく不味いコーヒーが出てきそうなので、自分で入れることにした。そしてキッチンへ向かった。まだ時計は朝の6時45分なのに‥キッチンからは物音がした。

「誰かそこにいるのか?」
キッチンのカーテン越しに俺は声をかけた。
作品名:HAPPY BLUE SKY 作家名:楓 美風