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ホットスポット

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街はどこもかしこもクリスマスカラーだ。
前のビルも横のビルもクリスマスバージョンに飾り立てられている。
ただのビルなのに、何もそこまで飾り立てなくともいいじゃないか。
それなら私を飾り立てておくれ。

私の横を少し顔を赤くして若い男女が通り過ぎる。
今からどこに行こうか‥その相談か?楽しそうだ‥

また‥私の右側から初老の男がくたびれた表情で歩いて行く。
どうしたんだ?仕事をミスったのか?それとも人生に疲れたのか?
こちらまでくたびれた気分になる。

あぁ‥今度は泣き腫らした目の女が私の前を通り過ぎる。
どうしたんだ?そんなに泣いて‥彼氏とケンカしたのか?
それとも誰かに何か言われたのか?

楽しそうな人達は何もする必要がないが。疲れ切った人や泣いている人に。
何か声をかけてあげたい。背中や肩を軽く叩いて言葉をかけてやりたい。
でも私には見ているだけしかできない。そんな自分が腹立たしい事もある。

また私は‥20年もこの場所から動いていない。
20年もこの場所で道行く人々を見ているから、神様が私にプレゼントしてくれたのかもしれない。目が見えて耳が聴こえるように。

神様よ‥何にもデキないのに余計なモノを私にくれたものだな。時々そう思ってしまう‥本当に嫌になることもある。もうこのプレゼントは要らないから。
取り去ってしまってくれ‥お願いだ。

その時だった‥
年は50代だろうか?二人連れの男女が私の顔を覗きこんだ。
「あぁ‥まだいた」
「よかったぁ‥まだいたんだね」
二人とも私の顔を見て笑顔になった。

「ありがとう‥」二人は声を揃えて、私に頭を下げたのだ。
男の方がまた私に言った。
「アナタがここに立っててくれたから、息子を見つけることができました」
「ありがとうございます。息子はこアナタが大好きで自然と足がここに向いたのでしょう」何を言ってるんだ?この男女は‥
作品名:ホットスポット 作家名:楓 美風