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ゴースト・ワイフ

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 僕はカップボードの上に置いてある‥奈央の遺影を見ていた。その遺影の中の奈央は笑っている。でも僕は‥そんな奈央の笑顔が堪らなく辛かった。また目から涙が伝い落ち手の甲を濡らした。その手の甲の涙を、娘の沙希が自分のハンドタオルで拭いてくれた。翔太も同じように僕の手を握った。

「パパぁ‥おめめいたくなるよ」
「パパぁ‥泣かないのぉ」
子供達は僕を慰めてくれるが。まだ6歳‥母親の死を理解しているのか、していないのか。この時の僕には子供達の心を推し量れなかった。

 妻の奈央は、幼い頃に両親を交通事故で亡くし、祖父母に育てられたが。その祖父母も奈央が高校を卒業するまでに相次いで亡くなった。それから奈央は僕と出逢うまでずっと1人だった。僕も3年前に母が病死し、また父は10年前に逝った。
互いに両親・親戚もなく結婚した当初は僕達はよく言った。
「ずっと一緒にいようね。そして僕達の家族を作るんだ」
「ずっと一緒にいよう。智君に似た男の子と私に似た女の子産むわ」と‥

 ふたごに翔太・沙希を授かったことは約束を果たせたが「ずっと一緒にいよう」の約束は果たせなくなってしまった。 これから僕はどうしたらいいんだ?
また‥目頭を指で押さえた僕だった。
作品名:ゴースト・ワイフ 作家名:楓 美風