ゴースト・ワイフ
10
私は智が考案してくれた方式で、自分が思っていた以上の事を伝えられた。また私と智のやりとりを大天使様のお使いの男が始終見ていた。そして私にこう言った‥
「貴女の夫もなかなかやるものだな。後1回しかチャンスは残っていないぞ。最後は何に使うんだ?言っておくが‥最後の1回を使ってしまうとその場で貴女は消えるよ。よく考えて悔いのないよう使いなさい」そう言って男は消えた。
私は男が言い残した言葉を口の中で‥何度もつぶやいた。そして‥智達がいるリビングへ向かった。智は私がリビングに現れるのがわかっていたのか、冷蔵庫のホワイトボードに私宛にメッセージを書いてくれていた。
「奈央!メモパッドを見て。また書き込みしてるから」と書かれていた。
私はホワイトボードの書き込みを見て、寝室に向かった。私はメモパッドをに書かれていた書き込みを見て‥涙が止まらなかった。私の涙が止まらなかったワケは‥智と私が同じ事を考えていたからだ。最後のチャンスにかけてみようと‥
僕は子供達には奈央とのやりとりのメモパッドを見せていない。見せたらきっと質問攻めになって、返事を書くだけで10分経ってしまう事が予想できたから見せなかった。子供達にはわからないかもしれないが‥奈央とスキンシップをさせてやりたいと思った。声は聴こえないかもしれない。でもメモパッドやペンを持てるのだ‥子供達の手や顔を触ることができるかもしれないと‥僕は考えた。また奈央も同じ事を考えていた。
僕は奈央に見えるように、またホワイトボードに書き込みをした。奈央がそばにいると思って僕は書き込みながらしゃべった。
「きっと子供達にもわかる‥大好きなママだから。僕だって‥君が大好きだから」
智の声が少し途切れた。そして智の涙が‥床に落ちて小さな水たまりを作った。