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ゴースト・ワイフ

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僕は信じられなかった。何も書かれていないはずのメモパッドに文字が書かれていた。その文字は奈央の字だった。いつの間に書いたのだろうか?

奈央が事故に遭う2日前だろうか‥
「あら‥どうしたの?ワイシャツの袖口についてるわ」
僕は奈央に言われて初めて気がついた。ワイシャツの袖口を見ると、マニュキャアが付着していた。
「あぁ‥ついちゃったか!今日お得意様の家に行ったんだ。ネイルもご注文頂いてて。3色お持ちしたんだ。サンプル開けた時に飛んだかな?」
奈央は僕のワイシャツの袖口を手に取って。
「そうなの‥ネイルリバーで少し落としてからお洗濯しなくちゃ」
夕ご飯の支度をしていた奈央だから、僕はネイルリバーのある場所を教えてもらって取りに行った。奈央のドレッサーの引き出しを探ってる時にメモパッドを見つけたのだ。封は切ってあるものの、何も書き込んでいないメモパッドだった。僕が「使えよ」と何度も言ったが、奈央は使わなかった。
「だって‥使っちゃったら勿体ないもん。初めてお揃いで買ったモノだし」

そう言ってずっと大事にメモパッドを持っていた。僕はメモパッドを手に取って表紙をめくった。その時には何も書かれていなかった。それからすぐに奈央は交通事故で亡くなったから‥書けるはずがない。僕は書かれていた文字を一文字ずつ丁寧に読んでいった。
気がつくと‥また床に僕の涙の跡が残っていた。

僕は目をこすりながら、メモパッドに書かれている文字を見た。見覚えのある奈央の字だ。見間違えるはずがない。奈央の文字は少し右上がりの字だったから‥

メモパッドにはこう書かれていた。

智さんへ

 信じてもらえないかもしれないけど、私はまだあなた達の周りにいるのです。肉体は存在しなくなったけど。あなた達には見えませんが、私はあなた達が見えて、あなた達の声が聞こえます。急にこんな事になってしまって。私はあなたや子供達に何も言い残せなかった事がとても心残りでした。

神様がこんな私にある機会を与えて下さいました。人間界の物を使えるように5回だけ使えるように私に魔法をかけて下さいました。この文章を書くので1回使ったので。もう後残りは4回ですが。この4回であなた達に伝えたい事や教えたい事を書き記したいです。

私が人間界の物が持てるのは1度につき10分だけです。10分の間に書き足りない事が出てくるかもしれない。でも私は書いていきた ‥‥

奈央の文字はそこで終わっていた。10分経ってしまったのだろう‥
僕は奈央の気持ちが痛いほどわかった。最後の「た」の文字が奈央の涙で滲んでいたから。
作品名:ゴースト・ワイフ 作家名:楓 美風