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目覚めると…

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第2章(2) 私は一体どうしたのだろうか?



<1> 

 翌朝‥私は痛む頭を押さえながら携帯に手を伸ばした。とても頭が痛くて出勤できる状態じゃなかった。直樹に電話して頭痛薬を買って来てもらおうかと思ったが。携帯の手に持ったのは良かったが「ダイヤル」ボタンは押せなかった。直樹にまた嫌味を言われるのがわかっていたから。私は痛む頭を押さえてまたベッドに戻った‥そしてまた昏々と眠り始めた。頭が痛いのによく眠れるなんて‥私の体はおかしいのだろうか?またその日も起きれなかった私だった‥

 また夢を見た‥母が私のオデコと自分のオデコをくっつけて熱を測っている。小さい時に私が熱を出す度に母はこうやって熱を測ったものだ。母は冷たいタオルで私の首筋を冷やし耳元でよく歌を歌ってくれたものだ。私は母の歌う「童謡」が好きだった。「カモメの水兵さん」や「さくら」の歌が好きだった。その歌を聴きながら眠ると不思議なモノで熱が下がっていた。
 
「お母さんは魔法使いなんだよ。美咲ちゃんのお熱を下げるのもなんのその!」
と言って母は頭をなでてくれたものだ。私は今、心身ともどん底なんだな。こんなに頻繁に母が夢に出てくるのは。

 上京の時に母と大喧嘩をした!妹は間に入って止めたが‥私は玄関に置いてあったトランクと持って家を飛び出してしまった。泣きながら新神戸駅に向かったのだ‥その時に決意したのだ。

「もうここには帰ってこうへん!おかぁちゃんみたいになれへん!私は違う」と泣きながら言った。
まだ20歳の私は威勢だけはよかった。それから10年神戸には帰らなかった私だった。何度か神戸に帰ろうと思ったが、意地もあったのだ。帰ったらまた母にそれみたことかと言われるのがイヤだったから、昨日まで歯を食いしばって頑張ったのだ。

 また新神戸駅が夢にいつも出て来るという事は‥私は本当は神戸に帰りたいのではないかと思った。帰れるものなら帰りたかったが、辞めて帰りでもしたら‥母の小言とクリニックの上司の嫌味な言葉が待っているだろうと思った。ソレが嫌だった。
そんな気持ちと身体は比例して私はますます具合が悪くなったようだ。もうベッドで身体も動かせず‥ただ天井を見つめて泣いていた。泣き疲れてまた眠る‥その繰り返しだった。
作品名:目覚めると… 作家名:楓 美風