ダブルな顔
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それから2週間が経った。私は今日も片手にくまのぬいぐるみの「あんず」をダッコして。手にはあんずの着せ替え用の服を詰めたバックを持って、例の部屋に行った。
桃姫のメイドこと「シェリー」さんはすごく喜んでくれた。バックの中には桃姫へのプレゼントが入っていた。それをシェリーさんに手渡した私だ。
「か‥かっわいい!これはさくぴーが作ったの?ね!ね!」
「はい‥私が作りました。市販のお洋服だとサイズが合わない時がございますでしょう。だから‥」
私はまた、バックの中からクリアーファイルを出してシェリーさんに見せた。
部屋を出る時にシェリーさんはこう言った。
「さくぴー‥私にも教えて。お願い‥桃姫に作ってあげたいの。さくぴーがプレゼントしてくれたワンピースみたいに」
「いいですよぉ。では、次回はお裁縫セット持ってきますね。さくぴーの魔法の裁縫箱です」
シェリーさんは嬉しそうにうなづいた。
カウンターに戻ると、マイノートパソコンにメールが受信されていた。横の元山さんは今‥接客中だ。私はマウスでメールボックスをクリックした。メールを読んでいく‥
元山さんがランチ休憩に出て、私はカウンターに1人で座っていた。そのタイミングを計ったように内線電話が鳴った。
「はい‥リフッレシュルームフロント 榎本でございます」
受話機を置いてから。
「すぐに戻ります。ご用の際はベルを鳴らして下さい」のプレートをカウンターデスクにプレートを置いた。
私は隣のドアをノックしてから入室した。
「もうメチャ気に入ったって。あんずとお揃いのエプロン付きドレスを‥目がこんな風になってたわよ」
武田さんは自分の目を指で下げた。また横で立野ゼネラルマネージャーがファイルで口を押さえて笑っている。
「気に入って頂けて嬉しいです。シェリーさんはお裁縫も興味があったようですが‥できなくて」
「そりゃそうよ。あの方はXXX財閥の会長よ!お裁縫したいなんて言い出せないわよ」
武田さんも立野ゼネラルマネージャーの言う事にうなづいた。
「今度のお約束の日には‥基礎から教える事になりました。あのぉ‥」
私は思いきって、立野ゼネラルマネージャーに頼みごとをした。
それから間もなくの事だった。私はまた立野ゼネラルマネージャーに呼ばれ、ピンクのファイルを手渡された。
「さくぴー!もうお1人担当して見ない?シェリーさんがご紹介下さったのよ」
私は手渡されたファイルに目を通した。リクエストシートを読んでいく…
「かしこまりました。私でお役に立てるのなら」笑顔で承諾の返事をした。