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俺はキス魔のキッシンジャーですが、何か?【第一章・第二話】

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会場がざわつき始めて、騙流と衣好花もやってきたが、何もできない補習生状態。


「あの子、死んじゃったのかしら。」「救急車より葬儀車を呼んだ方がいいね。」「ここが死に場所なんて、たくさんの人に看取られたって、あの世で自慢するのかなあ。」


何の関係もない第三者の逝去。こんな時、世間の冷たさを実感するものである。
すでに泣き出している楡浬とただ茫然と眺めている無表情な騙流と沈痛な面持ちの衣好花。ざわつきのやまない会場の空気の中で、一陣の風が動いた。


「私に任せて!」
赤いセーラー服の女子が、ドングリを横にしたような紅色の瞳を輝かせ、目と同じ色の長い髪を靡かせながら、仰向けになっている大悟の前に立ち、そのまま跪くと、大悟の口に自分のそれをドッキングした。


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「エエエエ~!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


どよめく楡浬たちと会場の人々を完全スルーして、赤目赤髪女子は大きく息を吸って、大悟の肺に空気を送り込んだ。人口呼吸だ。赤目赤髪女子は何度も吸っては吐く。


「がはっ。」
大悟が声帯を鳴らした。蘇生したのだ。


「がはっ、がはっ、がはっ。」
激しく咳き込んだ大悟は目を開いた。


「甘~い。」
生き返っての最初のフレーズは昔流行った漫才コンビのギャグフレーズだった。


「大悟が生き返った!地獄の底から夜道を這いつくばったわ。」
ビミョーに慣用句を間違えている楡浬。


次の瞬間、赤目赤髪女子は再度唇を大悟につけた。今度は人口呼吸ではない方のコマンドだった。呆気に取られた楡浬たちと大衆。


「これが私のファーストキスよ。この人が私を奪ったのよ。もう添い遂げるしかないわ。」


赤目赤髪女子がいきなり大悟嫁就任宣言した。


「何よ。大悟の許嫁はこのアタシよ。トンビは唐揚げにするとおいしいのよ。」


大統領候補者のように激しく反論した楡浬。こういう時、内容より勢いであることはリアルの討論会が証明している。


「古女房は産業廃棄物だから、とっとと夢の島に運搬されて欲しいわ。」


「何言ってるのよ!アタマおかしいんじゃないの。脳狂は日本の脳幹を守ってればいいのよ。」
すでに言語体系が破綻している楡浬の図。


「来たわね。じゃあ、いただくわ。ごちそうさま。」


言葉を発した直後、そこにいたのは女子ではなく、饅頭人だった。饅頭人はシロナガスクジラのような口を開けて楡浬をイッキに呑み込んだ。すると、再び女子の姿に変身した。そこに立っていたのは、金色ツインテールで、やや吊り目の美少女。


「ゆ、楡浬!?楡浬なのか、間違いじゃないよな。」


 しかし、大悟にはそれが完全体の楡浬でないことがすぐにわかった。


「楡浬じゃない。その放漫かつ疑似豊満なものは何だ!」


 胸部がビミョーに盛り上がる山脈が確認された。それまで楡浬からは造山運動はほとんど皆無に近かったので、これは世紀の発見である?