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俺はキス魔のキッシンジャーですが、何か?【第一章・第二話】

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「そういう意味じゃねえ!何かやってくれよ。オレの許嫁だろ。無価値なものだけど、無価値はカネでは買えないぞ。不等価交換だからな。」


「何正しいロジックを展開してるのよ。無意味な会話はなんだかアタマに来るわ。」
楡浬のからだから、いい湯加減の蒸気が出てきた。


「大悟。シワが少なくて、味噌汁にすら使えないあんたの脳みそを壊してやるわ。」


「脳みそは味噌汁には使えないぞ。ダシを取るだけにしろ。」


「またまた人をバカにして~。」


饅頭人そっちのけで、大悟を襲撃しようと足を踏み出しする楡浬。その時、楡浬のローファーが転がっていた饅頭人の千切れたパーツを踏んでしまい、楡浬のからだは滑って宙に舞い、C難度の空中回転をクリア。そのまま大悟の背中にドッキング。楡浬子亀を載せた親亀大悟は饅頭人を熱烈ハグ。その瞬間、大悟は背中を強くプッシュされた。大悟の脊髄から何かの信号が大脳へ奔流した。


「この異物感。キタ~!これが背中スイッチ(バックコード)だ!」


大悟の背中に電気のような波が流れ、楡浬と大悟の全身は真っ赤に変色した。そのまま大悟は饅頭人を抱き締めると、饅頭人は悲鳴のような叫び声を上げてからだから、『シューシュー』と音を出して、消えた。


「やった。饅頭人を倒したぞ。こいつは熱に弱いのか。そこは饅頭らしいな。」


「そうね。これがアタシたちの最初の共同作業ってとこかしら。ホントに許嫁っぽいわね。・・・。い、いつまでこんな羞恥プレイポーズとってるのよ。早く下ろしなさいよ。」


「ゴメン。もう背中にプレッシャーは感じないし。さっきはどうして、異物感があったんだろうか。」


「そんなの上から飛びかかったからに決まってるでしょ。って、常にアタシの大海はボリュームに満ち溢れてるハズなんだからねっ。」


大悟から降りた楡浬は背を向けて大悟に声を発していた。大悟には見えなかったが緩んだ表情には笑みがあった。

 この日の夜。ふたり帰宅した大悟と楡浬。エプロン姿で、玄関で待っていた桃羅。


「お帰り、お兄ちゃん。一日千秋の思いって、すごく重たいんだね。モモはバイトを早めに切りあげて待ってたんだよ。お帰りの夕一パンチラだよ~。」


 桃羅はエプロンを脱ぎ捨てて、フィギュアスケーターのように回転を始めた。スカートがキノコのカサのようになった。



「やめてくれ!」


「大丈夫だよ、お兄ちゃん。この速度ならパンツを視認することは不可能だから。モモはその程度の恥じらいは持ってる安心設計だよ。」


「やってること自体が不安の塊だよ。」


 大悟の言葉を聞き流した桃羅の視線ベクトルは、サーチしていたが、大悟の腕付近で急停車した。


「お兄ちゃん。ところで、その闇世界のように繋がれた手は何?まさか、愛人二号の魔の魔の魔の魔力に拘束されたってこと?」


「「あっ!」」
 大悟と楡浬が同時に埴輪のように開口し、ソッコーで分解した。


「さっき、ママからメールが来たよ。お兄ちゃん、大活躍だったらしいね。あの饅頭人を倒したとか。それはスゴいことなんだけど、ちょっと喉に引っ掛かることがあったり、あったり、あったり。」


「大当たりだ!あったりーん。ゆるゆる、はっじまるよ~。」


「つまんないツッコミをいれるんじゃないよ。すでに自覚してるようだけど、饅頭人の発見の仕方と倒し方に大いに問題があるんだけど。まずは発見の方だね。」


「ギクッ。最近首がよく凝っていてなあ。」


「だったら軽~くへし折るのはカンタンなんだけど。」


桃羅がそう言った時、なぜか楡浬が大悟の首に手を回していた。


「おい楡浬。被告人席から原告側にモードチェンジしてるように見えるのは気のせいか?」
「それはそれ、これはこれ、あれは淫行よ。」


「あれは『アレ』と表記するのがフツーじゃないのか。」


「どうみても破廉恥じゃない。いきなり女子にキ、キ、キスミントするなんて!」


「ずいぶんさわやかに収めたな。」


「そうじゃないよ、お兄ちゃん。キスならモモが年中無休で開店中なんだから、他に行く必要ないんだけど。」


「でも仕方ないだろう。あーするしか饅頭人の判別方法が見つからないんだから。オレだって、好きでキスしたんじゃない。タラリ。」


「その口から溢れ出る体液は大脳のエロ皮質が司令塔じゃないのかな?」


「そんなことない。オレの大脳は魔力を高めることが九割を閉めているはずだ。」


「『閉めて』いるんだ?やっぱり、魔力脳は眠ってるんだ。」


「いや間違った。占めるだ。」


「もう遅い。お兄ちゃんのエロアタマを解剖してやる!」


「ちょっと待て。饅頭人の倒し方は問題ないのか。」


「そうだね。むしろモモ的にはこちらが難問だね。」


桃羅はキッと顔を引き締めて、楡浬を睨みつけた。


「な、なによ。倒し方は『妹の膿(まいのうみ)』がヒントをくれたんじゃないの。」


「その二つ名、ホント嫌味だね。それはそうだけど、虚乳を押し付けろとは言ってないよ。同じポーズならモモにやって欲しいよね、お兄ちゃん。」


「欲しくねえ。オレは楡浬とそういう姿勢を取るのもまっぴらだ。」


「なんですって。アタシはすごくイヤなポーズをガマンしてたのに、そんな言い方するなんて。」


こうして、三つどもえのケンカはヒートアップするばかり。


「そこまで言うならこうするしかない!」


大悟はしかめ面の楡浬を、カーテンを絞るように抱き寄せて、いきなり唇を奪った。
あまりに唐突な出来事に、楡浬はもちろん、桃羅も呆気に取られてしまった。


「オレたちは許嫁なんだから、これぐらいなら不純異性交遊フラグは立たないだろう。」


「う、うん。」


楡浬は綺麗に掃除されたフローリングを見つめていたが視野には入っていなかった。


「お、お兄ちゃんのバカ!」
桃羅は泣きながらリビングの奥に消えていった。

こうして楡浬と大悟は饅頭人討伐隊として日夜ではなく、放課後限定で職務遂行することとなった。
饅頭人リサーチは魔法伝家協会が行い、大悟たちに知らせるという仕組み。しかし、協会からの連絡は地域までの指示に留まり、そこにいる女子たちの中から饅頭人を特定する作業は大悟しかできない。つまり、大悟は手当たり次第に女子にキスして饅頭人判別をやらざるを得なかった。こうして『キス魔=キッシンジャー』というありがたくない称号が哀れにも誕生したのである。
さらに楡浬は毎回目の前で大悟のキスを見せられて、怒り。


「キャー!キッシンジャーが出たわ。それに愛人二号も一緒だわ。キモイ!」


「大悟のせいで、清楚でセレブなアタシまで、野蛮な罵声対象に成り下がったんだからね。しかもどこから湧いたのか、愛人二号なんて妹の膿が使う呼び方が世間に流布してるわ。インフルエンザも真っ青だわ。」


「仕方ないだろう。オレだって好き好んでやってるわけじゃ。ぐぐぐっ。ジュルジュル。」


「口というふぬけた空洞をよだれで満たしながらしゃべるのはやめなさいよ。それより饅頭人をすぐに消すわよ。」


「はいよ。ほら、乗れよ。どうしたんだ。早く。」