小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

昭和の子

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 

終章


 智子の退院する日が来た。
 昔のことを振り返ってみて、しみじみ思う。
 清潔で便利な世の中となり、これからも文明の進化は続いていくことだろう。でも、汚れた服で思いっきり外を駆け回る子どもらしい笑顔が、見られなくなるのではないだろうか? 個人情報という柵の中で、人と関わりを持つことが少なくなっていくのではないだろうか? それで本当に幸せな時代に向かっているのだろうか?
 その時代の暮らしを後世に語り継ぎ、より良き時代へと導くよう先人たちは願ったに違いない。自分も後に続く人たちへ心を馳せる年代を迎えた。
 平成に育った人たちも、いずれは今の暮らしを次の世代へと語り継ぐ番がやって来る。それを繰り返し、時代は過ぎて行く。昭和の時代はもう歴史のページの中に埋もれ始めているのかもしれない……

 入院という非日常の空間が、こんな感傷的な気持ちを駆り立てたのだろう、そう思いながら智子は病院を後にした。


               終
作品名:昭和の子 作家名:鏡湖