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昭和の子

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遊び

 
 智子が子どもの頃は、町内には子どもがあふれていた。約束などしなくても外へ出れば誰かがいる。
 母親たちは家の用で、子どもにかまってなどいられない。家電製品に頼れる時代ではなかった。そして、子どもたちは年齢など関係なく、暗くなるまで遊び回った。
 
 男の子は、いつも町中を走り回っていた。路地を抜け、よその家の庭を通り、塀があってもお構いなしだ。そして棒を振り回してはチャンバラごっこ、そして鬼ごっこにかくれんぼ、缶蹴りなど、とにかく体を動かし続けた。
 女の子の外遊びの定番は、ゴム縄跳びや石蹴りなどだ。ろう石で道路に絵をかいたりもした。少し大きくなると、男の子はメンコやベーゴマ、女の子は着せ替え人形にはまっていった。
 
 その頃は至る所に原っぱがあった。ドラえもんでよく見る、原っぱに土管という光景があちこちに見られたものだ。今思うと、なぜ、あちこちに土管があったのか不思議な気もするが。
 田んぼや小さな池も点在していた。ある小さな池に三角池などと子どもたちは勝手に名前をつけ、ザリガニ取りに興じた。危険な場所もたくさんあった。柵などついていない。でも、子どもたちは自然の防衛本能からか、あるいは年上の子から学ぶためか、危ないことは避け、事故も起きなかった。
 こうして、町全体が子どもたちの遊び場だった。チャイムなどの知らせがなくても、暗くなりお腹がすけば、みんなそれぞれ家に帰って行った。
 
 智子はつぶやいた。
「とうとうリカちゃん人形は買ってもらえなかったなあ……」
 
 友だちが遊ぶのをいつも羨ましく眺めていたのを覚えている。
 でももっと幼い頃、ダッコちゃんという空気で膨らませる人形が空前のブームになったことがあったらしい。それを欲しがる智子のために、父が並んで買ってくれたと聞かされたが、残念なことに、あまりに幼すぎて智子の記憶にはなかった。流行りものと言えばフラフープが得意だったことは覚えている。
 お正月には晴れ着で羽根つきをし、河原では、男の子たちが凧揚げをする風景が見られた。そんな絵にかいたような日本のお正月は、いつからなくなってしまったのだろう。
 そして、遊びの延長に駄菓子屋の存在は欠かせない。学校から帰ると小銭を握りしめ、毎日のように近所の駄菓子屋へ走った。
 
作品名:昭和の子 作家名:鏡湖