恋文だけを書かせて下さい
君もぼくも既婚者
お互い自分の体から抜けだしてしまった自分が居た
それゆえに
自由に君もぼくも
愛を育んでしまった
体を重ね合わせることさへ
後ろめたさなど感じることも無かった
ただ
いつももう1人の自分たちが
全てを観ている気がしていた
君と居る時
ぼくは
その自分を殺したいと何度も考えた
正義とか道徳とか
君への愛が深まるほど
君もぼくと同じだったのだろう
お互いが恋文を交換した
重ね合わせた体の温かさよりも
お互いの心を熱く燃やした
ぼくは暗記しながら
恋文を燃やした
平常心で暮らす生活
今でも葛藤が続き
君への想いは抹殺したつもりなのだが
暗記した文が忘れきれない
作品名:恋文だけを書かせて下さい 作家名:吉葉ひろし