遅くない、スタートライン
第1章(4)
私は姉が帰ってから、どれほどソファーで座っていたのか。
立ち上がったら、お尻が痛かった。それほど長い時間座っていたのか?
時計を見て驚いてしまった。
姉は私にこう言った。
「うーん。私も深く考えずにその本を手に取ったの。表紙がいいじゃない?」
かもめ本を指さして、姉の指はページをめくった。
「美裕と同じ!私も文章にヤラれちゃったの。この人…なんて感性が鋭いんだろう」
私は無言でうなづいていたようだ。
「この本なら、美裕の出したがってる答えが書いてあるかもしれないと思ってね」
姉はそう言って、私の膝にかもめ本を置いて帰って行った。かもめ本の表紙の上に
手を置いて、私は黙考の世界に入ってしまった。
黙考の世界から戻ってこれたのは、お恥ずかしながら空腹を感じたからだ。
以前の私なら、食欲もなくベッドサイドのスポーツドリンクを飲んだら、
また眠りについたのだが。
今は確かに、自分のおなかが空いているという感覚があるし。
さっき、何年かぶりにおなかから音が鳴った。
グゥーッって!これにはびっくりした。
MASATOさんがかもめ本に書いてあった文章には…
「今日は体動かした?おなか空いてる?」
「俺は食欲のないときは、自問自答している。
不思議だ…この言葉を口にしたら動かなきゃと思い、セッセッと動き出す。
何でもいいんだ!掃除したり風呂入ったり、動いたらきっとおなかが空くさ。
空いたら食べなさい」
MASATOさんにしては、珍しくこの文章には【補足説明】が入っていてたから。
私はよく覚えていたんだ。私はまたMASATOさんのまねをして、
「今日体動いた?おなか空いてる?」と言って、自分のおなかに手を当てて…
「動いたよ!部屋の掃除した。お花に水やりした!うん、おなか空いてる」
と口に出して言ってみたら…またおなかが鳴り始めた。
「よしよし!お姉ちゃんお得意料理のオムライス食べる!」
私はキッチンに向かった。
第2章に続きます。(*^-^*)
作品名:遅くない、スタートライン 作家名:楓 美風