「歴女先生教えて~パート2」 第四十一話
「そうね。第二次世界大戦では連合軍が決死の上陸を果たした場所ね。史上最大の作戦と呼ばれ、映画にもなったわね。
この時代温暖化によって人口が増大するの。中国では隋唐時代に5000万人だった人口が、次の宋の時代には1億人まで増えた。最大の理由は暖かくなってコメの二毛作が出来るようになったことがあげられる。石炭のコークス化による火力革命で今の中華料理の基礎が出来たと言われる。
ヨーロッパでも1000年頃の人口は2500万人程度だったのが、1300年頃には7500万人まで膨れ上がり、世界の人口も2億6000万~7000万ぐらいから3億6000万~7000万人へと増加した」
「農産物の収穫が増えて食料が豊かになって、人口が増えたという現象ですね」
「そうね、そうなると商業も活発化して市民階級の台頭が目立つようになる。イスラム圏の力が弱まって地中海交易が盛んになり、イタリアでは海の共和国が栄える。一方で、人口の増大は、十字軍と呼ばれる東方世界への侵略を生み出したわ。中国宋の時代に王安石(おうあんせき)という人物が登場するの。彼は経済活動が盛んになって国が豊かになり放漫財政になっていることを改めようとした。この天才的な宰相は優秀な新進官僚を集めてプロジェクトチームを作り、徹底的に議論を重ねて法案を整備し、新法と呼ばれる改革を断行する。小さな政府で中間層を育成して富国強兵を推し進めると言うものだった。
政権を強くしようとする改革は、貧富の格差を嫌い、中間層を育てようとするのね。大商人や大地主が市場や土地を独占していたら、経済は上手く回らない。王安石は、マーケットメカニズムを活用して、経済を活性化させ、新陳代謝を良くしようと考えたの。これは現代の構造改革路線そのものだとも言えるね」
*王安石の改革は多くの成果をあげましたが、猛烈に反対する人々が居ました。中間層を育てるという事は、大地主や大商人たちの独占を排除しようというのですから、当然と言えば当然です。この王安石の改革があと10年とか20年とか長続きしていたら、中国は夢のような強国になっていたかも知れません。あまりにも時代を先取りしていた政策だったため、中途半端で終わってしまいました。儒教的・理念的な論陣(例えば、国家が貸し付けなどの商売をするのはおかしいなど)を張る勢力によって、時代は逆回転してゆくのです。(出口治明著:全世界史講義より抜粋)
作品名:「歴女先生教えて~パート2」 第四十一話 作家名:てっしゅう