真一君のバレンタイン
くれるよね?
「ホワイトデー、何か欲しいものある?」
いつもの喫茶店の いつもの席。
テーブルの向こうから、真一君は身を乗り出しました。
その勢いに押された葉月さんが、背中を 椅子の背に張り付けます。
「ま、まだ…バレンタインまで 2週間以上ありますよ?」
「…当然、くれるよね?」
上目遣いの真一君から、葉月さんは目を逸らしました。
「チョコなら…シンちゃんにあげるつもりは、ありません」
「え?」
「─ 去年あげた時『甘い物は好きじゃない』とか、言われましたし。」
「は、葉月ねーちゃん!」
真一君が、テーブルに手を突いて立ち上がります。
その姿を見て、葉月さんはニンマリしました。
「今 編んでるマフラーなら、シンちゃんに あげますけどね♡」
脱力して、椅子に崩れ落ちる真一君。
ニコニコしている葉月さんに、恨めしそうな視線を送ります。
「ねーちゃんの、意地悪。」
「すっかり…シンちゃんに感化されちゃいました♪」
作品名:真一君のバレンタイン 作家名:紀之介