化粧して!
「あーあ 落としちゃった…」
行信君は、化粧室から帰ってきた美姫さんに残念そうに見ました。
「…可愛く、なくなった?」
「化粧しなくても、美姫さんは可愛いですよ。」
「…そう言う恥ずかしい事、言うの止めてくれる?」
照れ隠しで、怒ってみせる美姫さん。
しばらく時間を置いてから、行信君が問い掛けます。
「次は…いつ、化粧してくれるの?」
「─ 来年の…行信の誕生日ぐらいかな」
「何で、1年後?」
「あんまり化粧すると…有り難みが無くなっちゃうし」
不満の視線を送る行信君に、美姫さんは軽く勝ち誇って言いました。
「化粧しなくても、可愛いんだから…必要ないよね?」
「…」
「姫様の意向には、従わないと」
「─ 承知致しました。ひ・め。」
「『姫』って呼ぶ時は、小さな声で!」