化粧して!
却下。
「じゃあ…次に合う時に、化粧して来て!」
横に座っている浩介君の顔を、薫さんが まじまじと見ます。
「誕生日の希望を、聞いたんだけど?」
「化粧した、薫の顔が見たい!!」
薫さんは、ベンチから離れた場所で灯る、公園の街灯に視線を移しました。
「却下。」
「…何で?」
ジト目の浩介君を見ない様にしながら、薫さんは、意識的に明るい声をだします。
「その日1日、浩介のお気にの場所を巡るって言うのは…どう?」
問い掛けに、何も返事は返されません。
暫くの沈黙の後、薫さんが口を開きました。
「次のデートに…八雲博物館に 一緒に行ってくれるなら、考えても良いけど…」
行き先に、浩介君が躊躇する場所を提案してみます。
「─ それでも良い?」
浩介君が諦めるのを確信する薫さん
しかし、予想は裏切られます。
「良いよ!」
「…え?」
「だから…化粧、して来てね!」
断わるすべを失った薫さんは、渋々同意しました。
「…りょ、了解」