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てっしゅう
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「歴女先生教えて~パート2」 第三十六話

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美穂の授業は世界史の中の日本という事で進んでいた。

「イスラムのことで最後に付け加えておきたいことがあるの。それはムハンマドの事。彼は文字が読めなかったから瞑想している時に心に浮かんだ神の声を口に出して詠唱して伝えたの。クルアーンとは翻訳不可能な言葉だったのね。なので今ある翻訳はあくまで参考という事になる。宗教家としても軍人としても、政治家としてもムハンマドは超一流だった。奥さんは40歳以上も若いアイーシャという人で、彼はその愛妻の部屋で亡くなっている。とても幸せな最後だったと思えるわ。イエスやブッダとは全く違う経歴がイスラム教の現世的な特徴であると言える理由ね」

「アイーシャって聞いたことがある名前です・・・うーん誰だったか思い出せませんけど」

「あら、望月さん、音楽にも関心が深いのかしら?」

「ああ!そうだ、思い出しました。スティービーワンダーの曲名にありました。たしか、可愛いアイシャという曲名です。缶コーヒーの宣伝で流れていました」

「そうね、彼はイスラムだという事がこの名前で解るわね。ではこの頃の日本はどうだったのか触れてみたいと思います。中国は隋から唐へ、インドではグプタ朝が創設したナーランダ大学で学んだ玄奘が、その後帰国して持ち帰った経典を翻訳した。玄奘の旅が西遊記のモデルになったことは有名ね。そして次の王朝の時に密教が始まったの。大乗仏教に次ぐ仏教第二の変革と言われる。ブッダが広く大衆に教えを説く形式だったのを、密教では宇宙仏である大日如来が、特定の行者に秘密を教え説く、という形式になった。その経典が大日経や金剛頂経なの。
大乗仏教は貧しい人々が解り易いヒンドゥー教に流れてしまったことから、それを防ぐために生まれたのだけど、お金持ちやインテリにはその事に対して不満が出たの。もっと高尚な教えはないのか?という欲求ね。ブッダの教えは、難しくて大衆に話しても理解されない、だからあなたにこっそりと教えます、という理屈で生まれたの。
サンスクリット語そのままで呪文を唱えたり、今までにない仏器や花を飾り、荘厳な世界を演出した。その密教が漢訳され、一部を日本に持ち帰ったのが、九世紀初頭の空海と最澄なの」

*倭国という名前は、前漢の歴史を著述した「漢書(かんじょ)」の中に初見されます。紀元前一世紀ごろです。その後、三国時代の史書「三国志」の魏書巻30の「東夷伝倭人条」に記述され、ここで卑弥呼が登場します。次の宋朝で、倭国の五王がしきりに使者を送り朝貢していることが「宋書」に記録されています。この五王と言うのはおそらく天皇(当時は大王)でしょう。そして王統が変わり、大和を中心に覇権を確立したのが、継体(けいたい)天皇(在位:507-531年)の時代です。大和朝廷として形を整えてゆくのです(資料:出口治明著、全世界史より)