脱出ゲーム小説
「ここは・・・何処だ?」
何もない部屋で、僕は呟いた。
「・・・っ」
何処かにぶつけたのかわからないが、少し頭も痛い。
顔を上げた僕は多少驚いた。
この部屋は何もない訳ではなかったからだ。
目の前には扉。いや、ドアノブも何もない、「何か」があった。
「なんだろう・・・?」
立ち上がって、その「何か」に僕は触れた。
「うわっ!?」
何故か、手が痺れる。
どうやら、この「何か」には、電流が流れていて触ると、手が痺れるようだ。
でも、出入り口らしきものは、この「何か」以外見当たらない。
「閉じ込められたようだ・・・」
僕は自分がどんな状況か、やっと判断がついた。
「まずは、部屋を探索だな・・・」
そう言った僕の足元には、手紙が落ちていた。――どうやら、僕宛の手紙のようだ。
手紙にはこう書いてあった。
『卯田浩史さんへ
そこにある、扉から脱出してみせよ。
この部屋の何処かに、爆弾が仕込んである。
爆発を止め、ここから脱出すれば、君を認める。
もし、脱出することができなかったら―――』
手紙はそこで途切れていた。
僕は急いで、部屋中を見渡した。爆弾を探すために。
それでも、何も見つからない。正直、焦りを感じた。
「何処にあるんだ・・・?僕は死ぬのか・・・?」
僕はそのまま後ろへ倒れた――
ガツン
「痛ッ!」
何にぶつかったのか確かめるために、僕は後ろを向いた。
すると、ベットがあった。
――記憶をたどってみると、さっきまでベットの上で寝ていたかもしれない。
いや、気絶していたかもしれない。・・・たぶん。
その時、僕は思い出したのだ。
僕がなぜここに閉じ込められているのか。
――それは、昨日の夜だった気がする。
僕は暗闇の中、眠れずに、散歩に出かけて、後ろから誰かに・・・
その時に僕は生まれて初めて、誘拐され、この部屋に閉じ込められたのだ。
「・・・くそ、あの時いくら眠れないからって、散歩に出かけるんじゃなかった・・・」
僕は後悔した。後ろのほうで、カチッカチッと何やら、音がする。
「何だ?」
僕は音のする、ベットの下を覗き込んだ。すると・・・
そこには、爆弾があった。しかも、色とりどりの線を切って爆弾を止めるタイプ。
「マジかよ・・・」
底を見てみると、はさみがあった。どうやら、これで線を切るらしい。
はさみを手に取ると、紙が落ちてきた。
それにはこう書かれていた。
『あたりの線を切れば、爆弾は爆発する。
はずれの線を切れば、爆弾は止まり、出口が開かれ、
君の命は助かる。
しかし、はずれの線は1本だけ。』
ここから脱出できる――
僕は僅かな希望と、絶望という感情を二つとも持ち合わせていた。
僕は微笑しながら、最後の言葉を呟いた。
「――死んでも構わないさ、もう僕はやるべきことはやり遂げたからね・・・」
そして、僕は目を瞑り、赤の線を切った。
――線を切った僕には、勇気など在りはしなかった。
ただ、ここから脱出したいという想いだけで、線を切った。
僕は、今、無音の世界にいる。
僕はゆっくり目を開けた。
やさしい光が、僕を包んだ――。